フルマカモメ(Fulmarus glacialis)の解説トップに戻る
フルマカモメ(Fulmarus glacialis)の分類 ミズナギドリ科(Procellariidae)
フルマカモメ(Fulmarus glacialis)の概要 フルマカモメ属(Fulmarus)

フルマカモメ(Fulmarus glacialis)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Fulmarus glacialis (Linnaeus, 1761)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:36-40 mm
・翼長:283-317 mm
・跗蹠:45.5-56 mm
・尾長:110-126 mm
・体重:450-611 g
・卵:長径 66.5-75 mm × 短径 46-51.4 mm 平均長径 70.7 mm × 短径 48.9 mm

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

分布

全北区。北半球の主に寒帯・亜寒帯にかけて繁殖し、冬はやや南下して越冬する。

和名はカモメとなっているが、カモメ類ではなくミズナギドリ科に属する。

北太平洋では亜寒帯海域に多く、ごくふつうに見られ、日本近くではサハリン、千島列島などで繁殖する。

日本での繁殖記録はなく、主に北海道や本州中部以北の近海に冬鳥として渡来する。

北海道北部の海上では夏にもよく観察される。

体色は変化に富み、全身が灰白色の淡色型と全体に黒褐色の暗色型、その間のさまざまな中間型があるが、淡色型は北方に多く、日本近海には暗色型が多い。

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

ミズナギドリ目 ミズナギドリ科

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雌雄同色】
頭部は淡灰色で、銀色の光沢が多少ある。

頸・肩羽・背・胸・腹・脇・腰・上尾筒・下尾筒は淡灰色で、ときには腹が体の上面より淡色のものもある。

翼と尾は暗灰色である。嘴色は黄色の角色、虹彩は暗褐色、脚色は黄色または緑青色を帯びた汚白色、趾の後端と趾膜は黒色。

【淡色型】
体の上面は淡灰色で、各羽の基部が白色であるため、全体に白色斑がある様である。

【暗色型】
全体に暗色を呈する。

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

孵化直後の雛は全身に綿羽が生え、頸上と体の下面は暗灰色となり、体の下面は白色、体の上面と翼とは淡灰色を呈し、肛門の付近には淡灰色の斑があるが、その後体の上面は暗灰色となり、体の下面は灰白色を呈する。

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は白色で斑紋を欠く。

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

生態

生息環境

繁殖地は海岸や島嶼の海沿いに限られ、断崖の岩棚で集団繁殖する。

生涯のほとんどを外洋ですごすため、海岸から観察ができない。

7月のオホーツク海では、多くの個体が水面で夜間をすごしている(田中・梶尾, 1979)。

ほかのミズナギドリ類が地上をはうようにしか歩けないのに対して、本種は比較的活発に歩くことができる。

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

食性

翼羽ゆっくり羽搏いて直線的に飛び、飛翔しつつ波間に浮かぶ餌をついばんだり、水面に下りて採食する。

水面では浮いて泳ぎ回り、オキアミなどの甲殻類、イカの幼体、稚魚など小型の海洋度応物をとって食べる(Fisher, 1952)。

約 3 mほど潜水し、半開きにした翼で水面下を泳いで捕食するという報告もあるが、ほとんど潜水せずに水面を遊泳しながら捕食する。

停船中の船から鯖の切り身を投与すると、餌に集まる個体は体長以上に沈む餌は捕食できず、潜水して捕食する行動は見られない(田中・梶尾, 1979)。

また着水個体は約 1 mの間隔を保ち、これ以内に近づくと相互に泳いで間隔を広くする(田中・梶尾, 1979)。

漁船が網を上げるときには集中し、サケやマスの漁船団の周囲に何万羽という数が集まってくるという。

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は5~9月、年1回、一夫一妻で繁殖する。岩棚の上に、1卵だけ直接産卵し、雌雄交替で52~53日抱卵する(Cramp & Simmons, 1977)。

1回の抱卵日数は平均すると4日ぐらいで、この間親は絶食して抱卵にあたる。

雛は半晩成性で、全身に幼綿羽が密生し、雌雄とも給餌する。

孵化後の約2週間は、どちらか一方の親が巣の近くにいて巣と雛を防衛する。雛は孵化後46~51日で巣立つ(Cramp & Simmons, 1977)。

巣立ちの2週間は親による給餌率が低くなり、雛は体重を減らして巣立ちに備える。

繫殖中の番や雛に近づくと、口から油のような琥珀色の臭い液を吐き出す習性がある。

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

鳴き声

常にはあまり啼かないが、繁殖期には低い声で唸るように啼き、巣に近づくとクァ、クァ、クァ、クァと啼き立てる。

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

特徴的な行動

繁殖期、非繁殖期とも群れる習性が強い。

集団で繁殖するが、ほかのミズナギドリ類ほど大きなコロニーになることはなく、場所によってはルーズコロニーになる。

コロニーの中では、番は巣を中心に狭い範囲のなわばりを構えて分散する。

繁殖期にはなわばりの中に雌雄が向かい合って座り、互いに頸を伸ばしてくちばしを開け、頭を上下左右にゆり動かすディスプレイを行う。

コロニーの中になわばりを獲得した番は、産卵の約2週間前になるとコロニーを離れ、ハネムーン期と呼ばれる番だけで生活する時期を迎える。

この間に、雌は大きな卵を産む栄養を貯えるため採食する。

参考文献

最終更新日:2020-05-20 キノボリトカゲ

種・分類一覧