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- エンペラーペンギン(Aptenodytes forsteri)について

エンペラーペンギン(Aptenodytes forsteri)
【IUCN】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
- 【 学名 】
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Aptenodytes forsteri G. R. Gray, 1844
基本情報
- 分布
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南極大陸の周縁部に生息し、繁殖は南極大陸とそれに隣接する島の氷の上でのみ行う。
ただし、亜南極の海域で若鳥が見られることもあり、また非繁殖期には南米大陸の南端付近まで北上するものもいる。
参考文献
最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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元生ペンギン中最大で、大きな個体は全長 120 ㎝、体重 45 ㎏に達する。
頸側に橙色の大きな斑があり、胸の上部は橙色で、ともに頭の黒色と接する部分は赤色みが強い。下嘴の基部3分の2は桃色。
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最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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エンペラーペンギンは、繁殖に際してほかのどんな鳥類よりも寒い環境条件に耐える。
かれらは、南氷洋の荒涼とした氷上で繁殖するが、そこは平均気温-20 ℃、平均風速は秒速 7 mからときには 21 mにも達する。
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最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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4~5月に集団営巣地に集まって番をつくり、白い大きな卵を1個産む。
巣は造らず、卵は直立した親鳥の足の上に置かれ、下腹部の皮膚で包まれ暖められる。
初め雌雄交代で抱卵し、数日後に雌は採食のために海に出て、雛がかえるまで雄がいっさい食物をとらず抱き続ける。
抱卵は約62日。雛がかえるころ、雌は脂肪を十分に蓄え、前胃に魚を詰め込んで営巣地に戻る。
雛は翌年の1月ころまで成鳥の世話を受ける。このような集団繁殖地が20か所知られており、個体数も30万羽をこえると推定される。
参考文献
最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ
- 子育て
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雄が立ったまま9週間もの間抱卵する。
巣はつくらず、卵は足の上に乗せたまま、股の間にある抱卵斑と呼ばれる皮膚の露出部で包み込んで暖める。
雌は産卵後、すぐに魚やイカをとるために 数百 ㎞も氷で隔てられた海面までの旅にでて、孵化する頃にようやくヒナにエサを持って帰る。
雄はそのときどき氷を食べて渇きをうるおすだけで、絶食して抱卵を続け、体重は半分に減ってしまう。
この抱卵期は、南極でもっとも厳しい季節で、しばしば気温は-50℃にもなり、猛烈なブリザードが吹き荒れる。
雄たちはたがいに密集して集団をつくり、集団の暖かい内側と風が当たって寒い外側とを、順番に交代しながら冬を乗り切る。
真冬である7~8月に孵化するが、雌の帰りが遅いときには、「ペンギンミルク」と呼ばれる脂肪分に富んだ食物を父親が口移しでヒナに与える。
この「ミルク」は食道の壁を溶かしてつくられたもので、絶食中にもかかわらず雄は文字通り身を削ってヒナを育てるのである。
雌がもどると、ようやく雄は採餌のために海へ向かうことができるが、海面までの道のりは氷に覆われてはるか遠く、歩いてゆかねばならない。
こうして雄の絶食期間の合計は100日を超える。
ヒナが1か月半ほどになると、両親はともにエサをとりに出かける。
ヒナだけが集まってクレイシと呼ばれる集団保育所を形成し、ヒナはおよそ5か月間、両親から給餌を受ける。
こうして大切に育てられたヒナも、その半数以上が独り立ちまでに命を落としてしまう。
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最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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1988年、エンペラーペンギンが採餌のために水面下 458 mまで潜水したのをペンギンに取り付けられた観測器が記録した。
このとき潜水は10分間続いたが、そのうち3分間は 400 mより深いところで費やされ、残り7分間は降下と浮上に当てられた。
エンペラーペンギンは水中では流線形になり、陸鳥が空中で翼を羽ばたかせるのと同じように、ひれ(フリッパー)を動かす。
つまり、潜水中は本質的には水中を"飛翔"しているのである。最高時速は 25 km/hに達し、少なくとも18分は息を止めておくことができる。
なぜエンペラーペンギンがこんなに深く潜り、そんなに長く息を止めていられるかはわかっていない。
はっきりしていることは、エンペラーペンギンが多量の酸素をミオグロビン(筋肉細胞中にあって酸素と結合するタンパク質)に蓄え、しかも潜水中には、ずっと少ない酸素量で筋肉細胞が機能できるということである。
これはつまり、息を止めさえすれば、短時間の深い潜水を何回も繰り返すことができることを意味する。
参考文献
最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ