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キツネザル科(Lemuridae)の分類 霊長目(Primates)
キツネザル科(Lemuridae)の概要 Lemuroidea

キツネザル科(Lemuridae)

【 学名 】
Lemuridae

基本情報

大きさ・重さ

リスくらいからネコくらいまでの大きさで、体重は 0.5~5 kgある。

参考文献

  • A.F.リチャード 1986 キツネザル, A.F.リチャード(著) 伊谷純一郎(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科3 霊長類. 平凡社. 20₋26.

最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン

分布

マダガスカル島にのみ分布する。

参考文献

  • A.F.リチャード 1986 キツネザル, A.F.リチャード(著) 伊谷純一郎(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科3 霊長類. 平凡社. 20₋26.

最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン

亜種・品種

キツネザル科(4属10種)

典型的なキツネザル(キツネザル亜科)(2属7種)
・ワオキツネザル(Lemur catta)
・クロキツネザル(L. macaco)
・カンムリキツネザル(L. coronatus)
・チャイロキツネザル(L. fulvus)
・アカハラキツネザル(L. rubriventer)
・マングースキツネザル(L. mongoz)
・エリマキキツネザル(Varecia variegata)

イタチキツネザル(ジェントルキツネザル亜科)(1属1種)
・イタチキツネザル(Lepilemur mustelinus)

ジェントルキツネザル(ジェントルキツネザル亜科)(1属2種)
・ジェントルキツネザル(Hapalemur griseus)
・ヒロバナジェントルキツネザル(H. simus)

参考文献

  • A.F.リチャード 1986 キツネザル, A.F.リチャード(著) 伊谷純一郎(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科3 霊長類. 平凡社. 20₋26.

最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン

人間との関係

マダガスカル産のすべての霊長類と同じく、キツネザル科のキツネザルは、アフリカのサルや類人猿、及びこれらの霊長類が大陸で顔を合わせている競争種や、捕食者の大部分から隔離された状態で進化してきた。一部の種は、アフリカのサルとよく似た生態的役割を演じているが、ほかのものは、霊長類としては独特の進化の道を歩んできた。

約2000年前に、人類がマダガスカル島にやってきて動物を狩り、生息環境を破壊し、それまでいなかった新しい種、特に家畜とウシとヤギを持ち込んだ。隔離状態のもとで進化したため、マダガスカルの霊長類はこのような外来者にうまく対処する方法を身に着けておらず、そのため、樹上生活者で、オランウータンくらいの大きさを持ち、コアラのように動き回っていたメガラダピス亜科の全種を含む、少なくとも14種が絶滅した。

現在キツネザル科には3つの亜科が生き残っている。キツネザル亜科(典型的なキツネザル)とイタチキツネザル(スポーティブキツネザル)亜科は広く分布しているが、ジェントルキツネザル亜科は絶滅しかかっている。

参考文献

  • A.F.リチャード 1986 キツネザル, A.F.リチャード(著) 伊谷純一郎(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科3 霊長類. 平凡社. 20₋26.

最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン

形態

成獣の形質

体毛は、イタチキツネザルとジェントルキツネザルは地味な灰茶色で、エリマキキツネザルは派手な黒と白、ないしは黒と赤である。雄と雌はだいたい同じ大きさであるが、〈真のキツネザル(もっとも狭義のキツネザル、つまりキツネザル属に含まれる種)〉では、雄と雌で体色が異なる。もっとも極端な例はクロキツネザルで、雄が漆黒なのに対して、雌は赤みないし黄みを帯びた茶色で、耳のところに白い房毛がついている。

キツネザル科には、しばしばふさふさした長い尾がある。後あしは前あしよりも長いが、この特徴はキツネザル亜科ではあまり顕著ではなく(前あしの長さは後あしの長さの69.7%)、ジェントルキツネザルではやや顕著で(67.1%)、イタチキツネザルではもっともはっきりしている(60.3%)。この差異は、一般に樹上生活者であるこれらの動物が、林の中を動く際の移動様式に影響を与えている。

鼻づらは黒く、突き出しており、感覚毛として機能するひげが生え、嗅覚能力と結びついた先端部の皮膚は無毛で湿っている(鼻鏡)。

参考文献

  • A.F.リチャード 1986 キツネザル, A.F.リチャード(著) 伊谷純一郎(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科3 霊長類. 平凡社. 20₋26.

最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン

生態

生息環境

森林に生息する。

参考文献

  • A.F.リチャード 1986 キツネザル, A.F.リチャード(著) 伊谷純一郎(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科3 霊長類. 平凡社. 20₋26.

最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン

食性

キツネザル科は植物食者である。かれらは、さまざまな姿勢で採食し、木のどんな部分にあるものでも利用することができる。ジェントルキツネザルを除くと、手を使って食物を扱うことは滅多になく、むしろ食べようとする部位のついた枝を口元に引き寄せて枝から直接食べる。特に大きなものを食べるときは、それを手に持つこともある。

ジェントルキツネザルは、より詳細な調査の必要が残されてはいるが、主として若いタケノコと葉を食べると報告されており、かれらの前歯は、このようなものを食べるために特殊化しているように思われる。上あごの犬歯は短くて幅広く、その後方の小臼歯は相対的に大きく、犬歯との間には大部分の霊長類に見られる歯隙がない。ジェントルキツネザルが、タケノコを食べるときには、門歯でそれを引き抜き、上あごと下あごの犬歯と小臼歯の間に咥えて、手で横方向にタケノコを引っ張り、外側の繊維質の層をはぎ取る。それから柔らかい内部組織を側方から口の中へ押し戻し、噛み砕く。

キツネザル属の食物は、種ごとにさまざまで、同一種内でも、地域ごとに、あるいは季節ごとに違いがある。

例えば、マヨットキツネザル(チャイロキツネザルの亜種の1つ)は、主にいろいろな植物の果実(採食時間の67%)と葉(27%)を食べているが、これらの採食部位が食物全体(採食時間)に占める割合は、果実で48~79%、葉で20~36%と季節によって変化する。

これに対して、アカビタイキツネザル(チャイロキツネザルの別亜種)は、採食時間のおおよそ半分を、2~3種の植物の葉を食べるのに費やしている。

マングースキツネザルの食物リストには、変わった要素が含まれている。かれらの乾季の食物をみると、採食時間の81%が花の蜜をなめたり、蜜腺を食べるのに費やされている。

参考文献

  • A.F.リチャード 1986 キツネザル, A.F.リチャード(著) 伊谷純一郎(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科3 霊長類. 平凡社. 20₋26.

最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン

その他生態

キツネザル亜科はほぼ四足歩行で、細い枝や樹冠のへりにある小枝のあいだを素早く動きまわり、ある樹冠から、数 m離れた隣の樹冠へ跳躍することもできる。

例外はワオキツネザルで、この種は通常地上を移動し、樹上では細く不安定な枝よりも太い水平の枝を好む。

ほとんど調査されていないカンムリキツネザルも、部分的に地上生活者かもしれないが、ワオキツネザルは、マダガスカル産の霊長類で、広範囲に地上を利用する唯一の種である。

ジェントルキツネザルは、まだよく研究されていないが、四つ足で移動したり、垂直な幹や枝の間を跳躍するのが観察されている。

イタチキツネザルは、ほとんどいつも跳躍で垂直な幹や枝の間を移動し、ときとして木のまたの部分や、しばしば水平の枝がまったくないところで、幹にしがみついて休息する。

すべての種、特にイタチキツネザルでは、嗅覚と結びついた脳の領域がいくらか縮小しているが、匂いの間隔はまだ重要な役割を保持している。嗅覚による情報伝達(コミュニケーション)は、彼らの行動において顕著な側面であり、すべての種が、枝の表面や、調節相手に匂いづけをするために利用する分泌腺を持っている。

ワオキツネザルの尾は、この点で2つの異なる機能を持っている。黒と尻が交互に並ぶ鱗状の模様のために、尾は特に目立つ視覚信号となっているが、儀式化された闘争の際に、ワオキツネザルは、腕にある分泌腺に尾をこすりつけたあと、これを自分の頭越しに相手に向かって波立たせる。

キツネザル科は、霊長類の典型的な特徴の1つである前方に向いた両眼を持ち、両眼視(立体視)ができるが、両眼視の視野はサルの場合(140~160°)よりもいくらか狭い(114~130°)。昼行性か夜行性かを問わず、多くのマダガスカル産の霊長類には反射膜(眼球脈絡膜の中層を構成するタペータム)を備えた網膜が存在する。これは夜間でも眼が見えるための特殊化である。ただし、キツネザル属のある種は、分布域によっては、昼間と夜間、あるいは夜間だけ活動するにも関わらず、キツネザル亜科(エリマキキツネザルとキツネザル属)はこの特徴を欠いている(ワオキツネザルは別)。

キツネザル亜科は、大きな叫び声によって、潜在的な危険に対して仲間に注意喚起したり、社会集団どうしが一定の間隔を保つようにしている。小さな叫び声には、群れのメンバー同士がまとまるのを助ける働きがある。

参考文献

  • A.F.リチャード 1986 キツネザル, A.F.リチャード(著) 伊谷純一郎(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科3 霊長類. 平凡社. 20₋26.

最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン

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