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- シロサイ(Ceratotherium simum)について

シロサイ(Ceratotherium simum)
【IUCN】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
- 【 学名 】
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Ceratotherium simum (Burchell, 1817)
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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【雄】
体長:370~400 cm
体高:170~186 cm
尾長:70 cm
前角:40~120 cm
後角:16~40 cm
体重:2300 kgまで
【雌】
体長:340~365 cm
体高:160~177 cm
前角:50~166 cm
後角:16~40 cm
体重:1700 kgまで
参考文献
- N.オーエン=スミス 1986 サイ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. pp. 46-53.
最終更新日:2020-06-29 ハリリセンボン
- 保全の取り組み
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シロサイは変わった分布をしており、ザンベジ川以南の南アフリカと、ナイル川以西のアフリカ北東部に生息する。
北の亜種(キタシロサイ)は近年の密漁により激減し、ザイールとスーダンに100頭足らずが残るだけとなった。南の亜種(ミナミシロサイ)は、19世紀を通じて乱獲され、絶滅寸前となったが、1920年以降の保護策が功を奏し、南アフリカ共和国のアンフォロジー動物保護区に、唯一残る群れが着実に増加している。
当初200頭だったものが、1960年代中頃までには2000頭近くになった。そこで、ナタール州公園課によってサイを捕獲して、かつて分布していた地域に移動させるという取り組みが実施されることになった。結果的にこの作戦は大成功を収めたため、シロサイは稀少動物のリストから除外されることになった。
1982年には、フルフルウェ=アンフォロジー動物保護区に1200頭と、それ以外のアフリカ南部にある保護区全体で同じくらいの数のシロサイが棲むまでに回復した。
しかし現在アンフォロジー動物保護区では、過密による生息環境の悪化が最大の脅威となっている。毎年余剰個体を間引く必要があり、年老いた雄の一部は、サファリの運営者に売られ、そこで合法的な狩猟の対象となっている。
この矛盾した状態は、保護団体などで争いのもととなっている。アフリカの多くの地域で行われている、違法なサイの狩猟を防止するための国際的な協力が行われている一方で、かつては稀少動物の筆頭でもあったシロサイが、正当な名目のもとに、南アフリカで合法的に狩猟できるからである。
保護関係者が効果的な保護策を検討しているあいだに、サイが生息するほとんどの地域で、状況は急速に悪化の道を辿っている。
参考文献
- N.オーエン=スミス 1986 サイ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. pp. 46-53.
最終更新日:2020-06-29 ハリリセンボン
- 人間との関係
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もっとも生息数の多いサイで、以前はアフリカのサバンナに広く生息していたが、20世紀にその数を急速に減らした。しかし保護活動によって素晴らしい回復を示した。
参考文献
最終更新日:2020-06-29 ハリリセンボン
形態
生態
- 活動時間帯
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日中も夜間も活動する。
参考文献
- N.オーエン=スミス 1986 サイ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. pp. 46-53.
最終更新日:2020-06-29 ハリリセンボン
- 特徴的な行動
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シロサイの雄が2頭、互いに睨み合いながら静かに歩み寄り、角と角を突き合わせ、それから後ずさりして、地面に角をこすりつける。この儀式化された対決は、何回も繰り返して行われ、ときには1時間にも及ぶ。そして両者はそれぞれの領地の中央に戻って行く。この儀式が行われるのは、2頭のなわばりが接する境界の部分である。
なわばりを持つ個体は、独特のやり方で糞と小便をし、それによってなわばりの匂いづけをする。糞をする場所は、決まった糞の山あるいは塚で、そのあと後あしでその糞の山を蹴り飛ばす。なわばりの境界部にはとくに大きな糞の山があり、蹴り飛ばされることによって、その山にはへこみができている。
尿は凄い勢いで噴射されるが、ふつう小便をする前には、角を地面にこすりつけ、足であたりをかきちらす動作がみられる。なわばりを持つ個体が、なわばりの境界地域を巡回するときには、この尿の噴射がとくに頻繁に見られる。
参考文献
- N.オーエン=スミス 1986 サイ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. pp. 46-53.
最終更新日:2020-06-29 ハリリセンボン
- その他生態
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成熟した雄は単独で生息する傾向があり、約 1 ㎢のなわばりを儀式化したディスプレイで守り、もし必要ならば角を使って戦う。
シロサイでは、発情した雌にどの雄が近づけるかという問題は、厳密ななわばり制度によって統制されている。優位な繁殖雄は、ほかの雄の立ち入りを認めない 80~260 haに及ぶ地域を占有している。
雄は、自分のなわばり内で出会った発情雌と連れ合い関係を作り、交尾が済むまでの1~2週間その雌をなわばりの中にとどめるように努める。しかし、もしこの雌がたまたま隣のなわばりへ行ってしまった場合には、雄は追っては行かず、雌は隣の雄と一緒になる。
なわばりの中には、ほかに1頭またはそれ以上の劣位の雄が生活していることがある。劣位の雄は尿を噴射することも、糞を蹴散らかすこともせず、雌と連れ合い関係を結ぶこともない。なわばりを保有する雄と向かい合うとき、劣位の雄は防御的な姿勢で立ち、大声でうなり、金切り声をあげる。雌も近づきすぎた雄を追い払うために、同じようなうなり声を出す。この対決はふつうはごく簡単に終わるが、もしその劣位の雄がほかのなわばりから侵入してきた個体である場合には、時間も長く、緊張した対決となり、ときには本当の闘いに発展することもある。
なわばりを保有していた雄が闘いに負けてしまうと、その後は、尿の噴射や糞を蹴り散らかすこともなくなり、劣位の雄がとる行動をするようになる。なわばりを持つ雄も、水飲み場への行き帰りに、ほかの個体のなわばりを通過するなど、自分のなわばりの外にいるときには、再び自分のなわばりに戻るまで、尿の噴射をすることはない。もし離れたところにあるなわばりで、ほかの雄と出会ったときには、服従的な態度をとり、劣位の雄のような声を出す。しかし、隣接するなわばりの中でそのようなことがあった場合には、優位になる雄としての態度をとりつつ、自分のなわばりへ戻る。
このような行動パターンは、なわばり保有者に、それぞれのなわばりという限られた領域の中では最高に強い立場を与えるような関係であることを示している。このおかげで優位の雄は、なわばり内で出会った全ての発情した雌と、ほかのどの雄からも邪魔されることなく連れ合いになり、交尾をすることができるのである。
成熟間近の雄と優位な位から追い落とされたかつてのなわばり保有者は、どこか適当ななわばり内に移り棲むことになる。そのなわばりの保有者は、いつであっても彼らが劣位の態度をとり続ける限りは、これら余分の雄が居座ることを許すことになる。劣位の雄は、このように一時的に交尾の機会を諦めなければならないのだが、いずれは力をつけて、近くのなわばり保有者に挑戦し、打ち負かすことができるようになるかもしれない。
シロサイは成熟に達しないものが2頭で一緒に暮らし、ときには大きな群れを作ることもある。
しばしば子どものいない雌同士が一緒に集まり、その際1~2頭の若ものを仲間として受け入れることがあり、こうして7頭ぐらいまでの永続的な群れができあがる。
また雌は 9~15 ㎢の行動圏の中で暮らすが、場合によっては、その外側にでて採食や飲水を行う。ほかの雌と出会うと、互いに親しげに鼻と鼻を合わせて挨拶を交わす。
参考文献
- N.オーエン=スミス 1986 サイ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. pp. 46-53.
最終更新日:2020-06-29 ハリリセンボン
関連情報
- その他
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寿命は45年。
参考文献
- N.オーエン=スミス 1986 サイ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. pp. 46-53.
最終更新日:2020-06-29 ハリリセンボン