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- ブチハイエナ(Crocuta crocuta)について

ブチハイエナ(Crocuta crocuta)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Crocuta crocuta (Erxleben, 1777)
基本情報
- 大きさ・重さ
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体長:120~140 cm
体高:70~90 cm
尾長:25~30 cm
体重:50~80 kg
参考文献
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
- 分布
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南アフリカ南部(絶滅)とコンゴ盆地を除くサハラ以南のアフリカに分布する。
参考文献
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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食肉目 ハイエナ科
参考文献
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
形態
- 成獣の形質
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短毛でくすんだ黄色から赤みがかった地色に、こげ茶で楕円形の不規則な斑紋がある。短めで逆立った起立性のたてがみを持つ。尾の先には黒くて長い毛の束をもつ。
ブチハイエナの頭骨は、ほかの大型食肉類が噛んだり消化したりできないほど大きな骨を砕いたり、厚い皮を咬み破ることに極めて特殊化している。
骨を砕くために使う小臼歯は相対的に大きくなっており、もっぱら犬歯は薄く咬み切ったり切り裂くのに使われる。
参考文献
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
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草地や平坦で開けた地形を好む。
参考文献
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
- 食性
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ブチハイエナの狩猟能力は、腐肉漁りに劣らず印象的である。たった1頭で、体重 170 kgのヌーの成獣を時速 60 kmの速さで 5 kmも追跡した後に捕捉することができる。ほかの個体がその追跡に加わることもある。
例えば東アフリカのンゴロンゴロ・クレーターの場合、同じ群れ(クラン)に属する50頭以上もの仲間が、最終的に一緒になって獲物を食べることがある。
これに対してシマウマ狩りの場合は、10~15頭が参加する。獲物の食べ方は貪欲そのものである。38頭からなる一群が、1頭のシマウマを、わずか15分でほとんど食べるつくしたという観察がある。ただし競争が激しくないときは、食べ方もかなりゆっくりである。
ブチハイエナはほぼ何でも食べるが、野生の状態では、体重 20 kg以上の哺乳類が食物の90%以上を占めており、この大半は自分で倒した獲物である。狩りを行う頻度は、どれくらい腐肉を利用できるかにかかっている。ブチハイエナは常に、ライオンなどほかの食肉類の猟の獲物を奪おうとしている。
群れでの食事は騒々しいことが多いが、本気で闘うことは滅多にない。その代わり、1頭1頭のハイエナは、15 kgもの生肉をあっという間に腹に詰め込んでしまう。よそでゆっくり食べたり、ときには水中に蓄えたりするために、死体の一部を運び去ることもある。
1回の食事で体重の3分の1の量を食べることもある。
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ブチハイエナ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 274₋275.
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
- 出産
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妊娠期間は110日である。
ブチハイエナでは1回に多くて3頭、通常2頭の子を産む。子どもはかなり発達した状態で生まれ、全身が茶色を呈する。
参考文献
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
- 子育て
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ブチハイエナでは子育てはもっぱら母親の責任である。しかし同じ群れの雌は共有する1つの巣穴で子どもを育てる。
巣穴の中は狭いトンネルが掘りめぐらされ、同種の雄も含めた捕食者から幼獣が逃げられるようになっている。
授乳は初めのころ、巣穴の外まで自分の子どもを呼び出して行われ、最高18ヵ月続く。そのため、巣穴にいる子どもに食物を持ち帰る行動は見られない。
参考文献
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
- 特徴的な行動
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ブチハイエナは入念な出会いの儀式を行い、匂いと音による効果的な長距離コミュニケーションを行う。
肛門嚢が発達しておらず、なわばりの境界にある糞場での集団においづけのときには、攻撃性があらわとなる。その際、分泌物を塗布するだけでなく、脱糞し指間腺のある前足で激しく土かきをする。
1頭で行動しているときでも、仲間と何らかのかたちで直接的な接触を保ち続けている。彼らは、人間であればアンプとヘッドホンの助けを借りなければ聞き取れないほどの音に反応する。人間の耳でも聞ける声には、低いうなり声、調子の速いうなり声、叫び声が挙げられる。
とくにワォーという声は 数 kmも届くため、遠距離のコミュニケーションには適している。この声は何度も繰り返し発せられるため、発信者の位置を知る助けとなるうえ、個体ごとに違う声を出す。
南アフリカのティムババチ動物保護区に棲むブチハイエナは、しばしばテープレコーダーから流される仲間の声に応えたり、そのスピーカーに何げなく近づくといったことをする。だが未知の個体の声を流すと、そこをなわばりにしているハイエナの群れが興奮した声を発し、たてがみを立て、そして高く尾を巻いて肛門腺を突き出して走り寄ってくる。
参考文献
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
- S.K.ビアーダー 1986 ハイエナのコミュニケーション, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
- その他生態
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ブチハイエナの生活は、単独あるいは協同しての狩りと成獣間での食物の分配の上に成立しているようである。協同は、集団での匂いづけ行動や縄張り防衛にまで及ぶ。この場合、血縁のあるなしに関係なく、雌雄が同じ役割を果たす。しかし、群れ内の競争は激烈になることがある。その際、コミュニケーション・システムが、攻撃性を減少させたり、群れとしての活動を調整するための適応として機能する。
ブチハイエナの群れは雌が優位で、砂漠では5頭以下、肥沃なサバンナでは50頭以上と多様である。群れは巣穴やトイレを共有し、鳴き声や匂いによるマーキング、境界線のパトロールによって 40~1000 haのなわばりを協力して守る。
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ブチハイエナ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 274₋275.
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン
関連情報
- その他
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最高25年(飼育下では40年)
ハイエナの「笑い」は、群れの年長者に対する服従を意味する。
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ブチハイエナ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 274₋275.
- P.R.K.リチャードソン@S.K.ビアーダー 1986 ハイエナ科, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 170₋175.
最終更新日:2020-07-03 ハリリセンボン