- 解説一覧
- ワラビ(Pteridium aquilinum)について

基本情報
- 分布
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日本全土はもちろん、世界中に分布する。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ワラビ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 879.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
- 和名の解説
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ワラビの語源については、諸説がある。ワラビのワラは茎、ビは食べられることの意という説、散生しているからワラビ(散生)という説。形が藁火に似ているから。また、野原に春早く萌えることを笑いに見立てての説などがある。
参考文献
- 山田卓三 1992 ワラビ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 443.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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方言名:アオクサ、ゼンザワラビ、ハシワラビ、ホダ、ホデラ、ホドロ、ワラベ
参考文献
- 山田卓三 1992 ワラビ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 443.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
- 人間との関係
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俳句で早春の山の萌芽を「山笑う」の季語にしているが、笑い説に通じる。またワラビが蛇の火難を救ったという伝説が各地にあって、蛇除けの霊威力があるとみなされている。
『和名抄』(932)には薇蕨の漢名をあげ、これに和名として「和良比」をあて、まだ葉が展開していない若い芽を熱湯につけて食べることが述べてある。これで、平安のころには既に山菜として食用に利用されていたことが知られる。
『農業全書』(1696)はワラビについて、「蕨は生にては性あしく、味もよからず。塩づけよし。ほしたるは出羽の秋田より出づる物、柔らかにして味よし」と記している。
また大蔵永常は『公益国産考』(1844)で、ワラビ粉デンプンの製法を詳しく述べている。デンプンは、根茎を秋に堀り上げて石の上におき、たたき砕いて水にかき混ぜて作るとしているが、また非常のときの食料品としての利用法にも触れている。
食料のほか、糊としても広く用いられ、特に和傘やちょうちんの骨に和紙をはるには、なくてはならないものだった。
世界に広く自生するワラビだが、葉柄を山菜として食べるのは日本人だけのようで、これを食べない東南アジア産のものが、安い値段で輸入されている。
干したワラビは火傷、血止め、脚気、しもやけなどに、民間薬として使用されている。
春から初夏まで、若い地上部が食べられ、根元のほうはかたくて食べられない。
乾いた平地のワラビはかたく、雪国や高冷地のワラビは良質で柔らかく、日当たりのよい原野の短いものより、深山の湿りのある林縁などに生えた、太くて長いもののほうが、柔らかくて美味しい。
摘み取ってから5~6時間以内のものは、ひとつまみの塩をいれた熱湯で茹でて、半日か1日流水にさらすと、アクはほぼ抜ける。この簡単なアク抜き法で、高冷地の柔らかいワラビなら、歯切れよく食べられる。昔は、草木灰を使ってアク抜きをした。灰は、ススキを焼いたものがよいとされていた。
大きな容器に、ワラビを平らに重ねて並べ、灰または重曹をふりかけて、熱湯をたっぷり注ぎ、ワラビが浮き上がらないように落し蓋をして、10時間~2日間そのままにしてアクを抜き、水洗いで仕上げると安心である。
生のまま多量の塩で漬けこみ、保存しておくと、塩蔵中にアクが抜ける。食べるときは、熱湯で茹で、水にさらし塩分を抜いて料理をする。
冷たいだし汁をかけて浸し物にしたり、大根おろしとおろし生姜、辛子醤油、ワサビ醤油などで味わう。葉が開いたワラビでも、ごく若い葉先 5~6 cmは生のまま天ぷらにできる。
【成分】
アミノ酸のアスパラギン、グルタミン酸、フラボノイドのアストラガリンが含まれる。ビタミンB₁を破壊する酵素が含まれているため、過食は避けなければならない。
【薬効と用い方】
・利尿、腫れものに用いられる
根茎と地上部ともに細かく切ったもの 10~15 gを1日量として、水 400 ㏄で3分の1量に煎じ、3回に分けて服用する。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ワラビ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 879.
- 山田卓三 1992 ワラビ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 443.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
形態
- 葉の形質
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葉は大きいものは 2 mに達し、葉柄下部(地中)には褐色毛が密生する。
葉身は卵状三角形で、2~3回は羽状裂し、最終裂片は長楕円形、鈍頭である。全縁で、少し裏側に巻き、裏側には普通軟毛があり、小羽片の先は分裂しないで長く伸びる。
葉脈は叉状に2~3回分岐し、密に平行に並ぶ。胞子嚢群は葉の裏側のへりに連続的に生じ、包膜に包まれ、裏側に反り返った葉緑がこれを包む。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ワラビ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 27₋28.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
- 根茎の形質
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根茎は長く地中をはい、径約 1 cmぐらいのものがあり、若い部分には褐色毛がある。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ワラビ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 27₋28.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
生態
- 生育環境
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日の当たる山野に多く、樹木が茂って日陰になると消滅する性質がある。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ワラビ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 27₋28.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
関連情報
- 栽培方法
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【採取時期】
地上部は山菜として利用するので、採取したらそのまま日干しにする。根茎は秋に地上部が枯れかける頃掘り取り、水洗いして日干しにする。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ワラビ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 879.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン