- 解説一覧
- ベニバナ(Carthamus tinctorius)について

基本情報
- 学名の解説
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属名の Carthamus はアラビア語の「染める」に由来する。
参考文献
- 御影雅幸 1997 ベニバナ, 八尋洲東(編) 植物の世界1,種子植物 双子葉類1. 朝日新聞社. 23₋24.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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別名:スエツムハナ(末摘花)、クレノアイ(呉の藍)
花の末(先)を摘むので末摘花と呼ばれる。またクレノアイは中国の染料の意味で、紅の語源となった。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ベニバナ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 60.
- 御影雅幸 1997 ベニバナ, 八尋洲東(編) 植物の世界1,種子植物 双子葉類1. 朝日新聞社. 23₋24.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
- 人間との関係
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中国、朝鮮半島を経て、古い時代にわが国に入った。
『本草和名』(918)には和名久礼乃阿為に紅藍花の漢名を与え、『和名抄』(932)では和名久礼乃阿井に対して漢名を紅藍、俗に紅花を用いるとしている。ところが万葉の歌を見ると、これを題材としたものが23首ほどあり、いずれも「くれのあい」から「くれない」に変わっている。また、中には末摘花を併用しているものもある。
歌の内容は衣を紅に染め、それを着て異性の歓心を得ようとするものばかりであるが、この頃から既に布を染める染料として盛んに用いられていたことが分かる。
江戸時代に染料植物として栽培が盛んになり、江戸末期の最盛期には年間200トンを超える生産があった。その約半量が現在の山形県産で、このためベニバナは山形県の県の花とされている。しかし最近では染料、薬用ともに需要が激減し、日本での栽培はごくわずかに行われているにすぎず、衰退の一途にある。
【中国での利用法】
中国の明の時代に出た『天工開物』(1637)にはベニバナで作った紅花もちを烏梅水で煮だして、稲わら灰で作った灰汁でたびたび澄ませると、色は大変鮮やかになると記してある。たびたび澄ませるとは、乾かしまた浸すことを意味する。
更に面白いことには、ベニバナで染めた礼服を沈香や麝香などの香料と一緒にしまっておくと、10日か1ヵ月ぐらいの間で変色するとある。
また同書には杭州の扇は銀箔を材料として、ベニバナの種子からとった油をそれに塗り、火であぶると金色になるという偽物作りにも使われていることを述べている。
【2種類の染料】
ベニバナの花弁の中には、黄色と紅色の2種類の色素が一緒に含まれている。黄色の色素をサフロールイエローというが、紅花染めをするときには、この黄色は使わない方がよい。これがあると真の紅色が出ない。ところが、サフロールイエローは花弁を水でもむと溶けて流れ出てしまう。紅色色素のカーサミンは水に溶けず、花弁の中にそのままの形で残っている。これを応用したのが紅花染めである。
【日本でのベニバナ】
小野蘭山の『本草綱目啓蒙』(1803)には、ベニバナの品質について「仙台より上品、次に出羽の山形、次に出羽谷智のものと磐城三春が続く。これら奥州の紅花もちはむしろとむしろの間にはさんで銭形に作るが、肥後から出るものは竹筒の中に入れて固めたもので、円形であるがかたい。薬にするのはこのようなものでなく花弁を包んでそのまま乾燥させた『ツミナリ』というものを用いる」と記している。
【ベニバナ油】
種子の脂肪油はリノール酸を約70%も含み、食用油として使用すると、血液中のコレステロール濃度を低下させ、動脈硬化予防になる。日本では結実期が梅雨期になるので、うまくいかないが、アメリカは世界第一のベニバナ油の生産国になっており、わが国も輸入している。
【薬効と用い方】
産前、産後、腹痛など婦人病一般に用いられる。よく乾燥した花 3~5 gを1日量として煎じて服用する。
インドでも古くから薬用とされ、種子油を去痰、尿砂石排出、排尿困難の治療などの目的で内用し、虫刺されや掻痒性皮膚病、リウマチなどに外用した。また花を煎じて、麻疹や小児の皮膚病に用いてきた。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ベニバナ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 677.
- 御影雅幸 1997 ベニバナ, 八尋洲東(編) 植物の世界1,種子植物 双子葉類1. 朝日新聞社. 23₋24.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
形態
- 葉の形質
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葉は互生し深緑色でこわく、広披針形で尖り、もとの方は円形である。
茎を抱き、へりは不揃いに切れ込み、先は刺状である。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ベニバナ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 60.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
- 茎(幹)の形質
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根茎は地下に浅くのび、茎は 1 m内外となり、上で枝分かれし無毛である。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ベニバナ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 60.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
- 花の形質
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分かれた枝先に、アザミに似た径 2.5~4 cm、長さ 2.5 cmほどの頭花がつく。頭花は黄色の管状花で紅変する。
外側の総包片は葉状でふちに刺がある。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ベニバナ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 60.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
- 果実の形質
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果実は白くてつやがあり、長さ約 6 mmで冠毛は短い。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ベニバナ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 60.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン