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- ケンポナシ(Hovenia dulcis)について

ケンポナシ(Hovenia dulcis)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Hovenia dulcis Thunb.
目次
基本情報
- 分布
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北海道(奥尻島)から本州、四国、九州などの山地に自生し、朝鮮半島、中国にも分布する。
参考文献
- 中村恒雄 1994 H. dulcis, 北村文雄(著) 塚本洋太郎(監修) 園芸植物大事典1. 小学館. 839.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
- 和名の解説
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中国での俗名「癩漢指頭」は、癩(ハンセン病)に侵された指頭という意味で、日本ではかつて、ハンセン病をケンボウ、テンボと呼んだことがあったため、テンボノナシからケンポナシになったという説がある。
オランダ医として来日したスウェーデン人ツンベルクは、日本名は「シク」または「ケンポコナス」としているが、これは肥前(佐賀、長崎県)の方言「ケンポコナシ」からきているようである。
それより48年後、ドイツ人シーボルトは、日本名を「ケンポノナシ」、別名の漢名を「シグ」としている。
それ以前の日本の本草学者たちは、枳惧の漢名を「シク」または「シグ」と読み、計無保乃梨(ケンポノナシ)として、ノの字を入れて読んでいた。ケンポナシになるのは『本草綱目啓蒙』(1803)が出た江戸時代後期からである。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ケンポナシ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 418.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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別名:玄の実(げんのみ)、手棒梨(てぼなし)、玄圃梨(けんぼがなし)、あまかぜ、けんぽんなし
参考文献
- 山田卓三 1992 ケンポナシ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 205.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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クロウメモドキ科 ケンポナシ属
参考文献
- 中村恒雄 1994 H. dulcis, 北村文雄(著) 塚本洋太郎(監修) 園芸植物大事典1. 小学館. 839.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
- 人間との関係
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生育ははやく、樹姿がよいので中国では庭木としても利用され、果柄が霜に当たると甘味が出て食用とする。食用のほか、家具、器具などの用材ともなる。
日本での生産は稀で、山堀りを育苗する。実生も難しい。中国では種子を薬用として、とくに解酒の効ありとされている。
この果実は子どもたちの大好物であった。晩秋から冬まで落ちたものを拾って食べていた。ときには雪に埋まっているものを掘り出して食べた。
【成分】
蔗糖、ブドウ糖、硝酸カリ(利尿作用がある)、リンゴ酸カリ、酵素ペルオキシダーゼなどを含む。
【薬効と用い方】
・二日酔いに用いる
1回 10~15 gを水 300 ㏄で、3分の1量に煎じて服用する。利尿作用と糖分が有効である。
参考文献
- 中村恒雄 1994 H. dulcis, 北村文雄(著) 塚本洋太郎(監修) 園芸植物大事典1. 小学館. 839.
- 伊澤一男 1998 ケンポナシ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 418.
- 山田卓三 1992 ケンポナシ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 205.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
形態
- 葉の形質
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葉は広卵形で鋭頭、基部はやや心臓形である。葉柄は葉身の長さの3分の1くらいで、2.5~6 cm、紅色をしている。
葉の上面は無毛で濃緑色の光沢があり、下面は帯白緑色で脈上に粗毛がある。
参考文献
- 中村恒雄 1994 H. dulcis, 北村文雄(著) 塚本洋太郎(監修) 園芸植物大事典1. 小学館. 839.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
- 茎(幹)の形質
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枝は長く、樹冠は広がる。幹肌は灰白色で小枝は紅色を帯びる。
参考文献
- 中村恒雄 1994 H. dulcis, 北村文雄(著) 塚本洋太郎(監修) 園芸植物大事典1. 小学館. 839.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
- 花の形質
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新しい枝の葉腋に集散花序をつくり、淡緑色の花をつける。
がく片は5個、花弁は倒卵形で5個ある。
参考文献
- 中村恒雄 1994 H. dulcis, 北村文雄(著) 塚本洋太郎(監修) 園芸植物大事典1. 小学館. 839.
- 山田卓三 1992 ケンポナシ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 205.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
- 果実の形質
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果実は無毛、円形か広楕円形、紫褐色、肥大した果柄の先につく。
参考文献
- 中村恒雄 1994 H. dulcis, 北村文雄(著) 塚本洋太郎(監修) 園芸植物大事典1. 小学館. 839.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
- 似ている種 (間違えやすい種)
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・ケケンポナシ(H. trichocarea)
花柄や花序に細毛があり、赤褐色の長毛が多い点で区別される。本州、四国に分布しており、果柄は同様に食べられる。
参考文献
- 中村恒雄 1994 H. dulcis, 北村文雄(著) 塚本洋太郎(監修) 園芸植物大事典1. 小学館. 839.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
生態
- 生育環境
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山地の沢沿いなどに生える落葉高木である。
参考文献
- 山田卓三 1992 ケンポナシ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 205.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
- その他生態
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果実の熟期は11月頃で、果柄とともに落果し、果柄は甘く食用となる。中国では乾果として市場に出ている。
参考文献
- 中村恒雄 1994 H. dulcis, 北村文雄(著) 塚本洋太郎(監修) 園芸植物大事典1. 小学館. 839.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン
関連情報
- 味や食感
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つるし柿に似た甘い味がする。
参考文献
- 山田卓三 1992 ケンポナシ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 205.
最終更新日:2020-06-08 ハリリセンボン