- 解説一覧
- ナツメ(Ziziphus jujuba)について

目次
基本情報
- 人間との関係
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材は硬く、車軸や印材となる。木版印刷の版木の材料ともなり、「棗本」とはその書物を指す。
日本には野生種がなく、中国から古く渡来したが、果樹としては発展しなかった。
十分紅熟した果実を日に乾かしたものを大棗と呼び、大棗にはサポニン、トリテルペノイド、ベンジンアルコール配糖体、有機酸類を含み、漢方では強壮、鎮痛、利尿薬とする。
また種子は酸棗仁とよばれ、脂肪油、トリテルペノイド、サポニンを含む。
鎮静安定、催眠作用があり、他の生薬と配合して、心因性・神経性の不眠症、健忘症、口渇、循環器系疾患、虚弱体質者の多汗、便秘にも使われる。
大棗を浸した薬用酒は冷え症、不眠症、病後の回復などに効く。生食のほか、乾菓や砂糖漬にして干した蜜棗とし、料理や菓子にも用いる。
中国は品種も多く、食べ方もさまざま。乾果を白湯に加えて飲むほか、ナツメをあんにした春餅などがある。
中国では古来冠婚や正月などに欠かせない重要な果樹の一つ。
古くに日本に渡来し『延喜式』には信濃、丹後、因旛、美作、備前、阿波からホシナツメを貢進したことが記されている。
茶道の薄茶器の一種を棗という。形状がこの実に似ていることから。
ナツメの木は、「詩経」や「周礼」にその栽培の記録を残し、6世紀の総合農書「斉民要術」に栽培法、果実の利用法が詳説されるように、桃、スモモ、梅などと並んで、中国における主要な果樹の一つであった。
ところで、中国の古代社会においてナツメの実は、婦人が舅姑に目通りする際に、棒や栗とともに持参する礼物の一つとして欠かせないもので、これは舅姑に対する婦人の敬虔の意を示すものと理解されている(「礼記」)。
また神仙伝説の世界では、ナツメの実は異果としてイメージされ、神々との交歓、共食の宴に象徴的に登場する。
たとえば、漢の武帝が西王母と会見する宴席に準備されたのは、ブドウ酒とともに玉門のナツメであった(「漢武帝内伝」)。
「樹高百尋、実長二尺、百年一熟」というナツメ樹が聖樹として想像されたように、生命の木の実と観念されたのであろうか。
なお「楓天棗地」とは占卜の道具を指すが、落雷によって裂けたナツメ樹を占いの星盤に用いれば、神霊と通じ、最も神意をうかがえるという。
季題は「秋」。「日照雨に濡るゝつぶらの棗かな 里風」「新しき箕して乾したる棗かな 鬼城」などの句がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ
形態
関連情報
- 栽培方法
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樹勢は強く、乾燥に強い。
繫殖は主として株分け、根ざしによるが、実生によることもある。
放任的でとくに集約的な栽培は行われていない。
アルカリ性土壌に耐え、乾燥にも強くよく育つが、下枝が枯れあがりやすく、また結果が隔年ごとになりやすいのでせん定が必要。
参考文献
最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ