- 解説一覧
- ヒオウギ(Iris domestica)について

基本情報
- 分布
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本州、四国、九州、沖縄に自生する。朝鮮半島、台湾、中国、インド北部にも分布する。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ヒオウギ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 803.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
- 和名の解説
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秋の初め、熟した果実が裂けると、光沢のある黒い種子があらわれる。この黒い種子を烏に見立てて、葉が扇のように並ぶので、烏扇となった。
しかし、平安の頃の扇は檜を薄板を重ねて作り、檜扇と呼ばれたため、烏扇の名が廃れ、檜扇に由来した名になった。檜扇は昔、貴人が威厳を正すときに用いたものである。
現在の和名はこの「檜扇」であり、葉のつき方に由来している。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ヒオウギ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 803.
- 山田卓三 1992 ヒオウギ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 382.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
- 人間との関係
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『和漢三才図会』(1713)では「咽喉腫痛に射干の根と山豆根の根の陰干しにした粉末を吹きかけると、その効は神のごとし」と記している。このように日本では、腫痛や扁桃炎に内服や外用することが行われてきた。
この射干はまた、中国の郵便切手にも取り上げられている。朱橙色の花を描き、右下に線画で薬用部分の根茎を描いているが、中国薬局方の『中華人民共和国葯典』に収載されているように、中国では熱を伴う化膿性のはれものに、煎じて服用する。
種子は漆黒で光沢があり美しいため、昔は宝石のように装飾品を作ったといわれる。
カラスの羽のような色であることから、「烏羽玉(うばだま)」ともいわれ、『万葉集』にもウバタマあるいはヌバタマとして詠み込まれた歌が80首ほどある。しかしこの植物を直接詠んだものではなく、夜、黒髪、黒馬など、黒いもの、暗いものの枕詞として用いられている。
【成分】
ベラムカンジンとイリジンを含む。
【薬効と用い方】
・扁桃炎、去痰に用いられる。
1回量 5~10 gを、水 300 ㏄で3分の1量に煎じて服用する。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ヒオウギ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 803.
- 山田卓三 1992 ヒオウギ, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 382.
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形態
- 葉の形質
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茎の下半には葉が扇形に並んで2列につき、鞘は花序になる。1枚の葉の形は平べったい広剣状で、多少白味を帯びている。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ヒオウギ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 15.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
- 茎(幹)の形質
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根茎は結節状で短く、不整に分枝する。そして蔓枝をだし、茎は緑色で、上の方は疎に何回も枝分かれする。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ヒオウギ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 15.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
- 花の形質
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分かれた枝先に数個あて柄でつき、下の方は4~5枚のへらがたの包葉に包まれ、径は 5~6 cm、黄赤色6弁で、内側には暗紅色の斑点がある。
雄しべ3、葯は長く、それに囲まれて雌しべがある。花柱の上の方は次第に拡大し横に傾き、子房は下位で緑色楕円状である。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ヒオウギ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 15.
最終更新日:2020-06-01 ハリリセンボン
- 果実の形質
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果実は倒卵状楕円形に膨らみ、熟すと裂ける。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ヒオウギ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 15.
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