- 解説一覧
- サフラン(Crocus sativus)について

基本情報
- 原産地
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ヨーロッパ南部あるいは小アジア
参考文献
- ピーター・ゴールドブラッド, ジョン・マニング 1997 サフラン, 菅原敬(著) 植物の世界9,種子植物 双子葉類9 単子葉類1. 朝日新聞社. 317.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
- 亜種・変種・品種
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花色の黄色いキバナサフラン(C. aureus)および、白~うす紫のハルサフラン(C. vernus)は、ともに園芸品種で、春に開花し、柱頭部はオレンジ色で短く、いずれも薬用には耐えない。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 サフラン, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 15₋16.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
- 人間との関係
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雌しべの花柱を乾燥したものが、ヨーロッパでは古くから料理や薬用に使われていた。これをスパイスとして用いる、有名な料理がブイヤベースである。
南フランス特有の香りをつける魚介類なべ料理で、海老や貝類とともに、玉ねぎ、ニンニク、パセリ、サフランを加えて作る。
スペインではごはんに炊き込み、黄色く特有の香りをつけるチキンライスがある。イギリスのコンオール(ドーバー海峡にある地名の名称)のサフランケーキも有名である。
菓子や料理に、香りと色と味をうまく調和させて、お国自慢にしているが、日本ではサフランの歴史が浅いため、そこまでにはなっていない。
またサフラン酒にして飲んでもよい。サフラン 10 gにグラニュー糖 200 gを加え、ホワイトリカー 720 ㏄に2~4ヵ月漬けてから、1日2回、10~20 ㏄ずつ飲む。
日本は江戸時代の初め、李時珍の『本草綱目』(1590)によって、番紅花という名前と撒夫藍の別名があることも知ったが、生薬として、この植物の雌しべの乾燥品を手にするのは、江戸時代も半ば過ぎたころである。
松岡玄達は、『用薬須知』(前編・1726)の中で、「近来番舶に将来する所のサフランというものあり。本草綱目の番紅花是也」と生薬が入ってきていることを述べている。だが、どのような植物なのかは、まだ知る由もなかった。
平賀源内は『物類品騭』(1763)で、「近世紅毛人トドニヤウスという者の本草書に、洎夫藍を図すること、甚だ詳なり」と述べて、この図を転載している。
小野蘭山は『本草綱目啓蒙』(1803)で、サフランの味が苦いこと、黄紅色であることを述べているが、植物については触れていない。
さらに飯沼慾斎は『草木図説』(1856)で「弘化の末蘭舶載来、漫にサフランの名を伝うという。葉ヒガンバナの如し」の述べたが、漫とは漫然との意味で、オランダ船が持ってきたものをサフランと言っているが、と前置きして、これは別のものでサフランモドキであると、詳細な図と解説を載せている。
そのためこの時代においては、ヒガンバナ科のサフランモドキ(Zephyranthes carinata)をサフランと呼んでいた。
江戸時代の本草家は、生薬としてのサフランを知ることはできたが、サフランの生の植物を見ることはできなかった。
その後、1886年(明治19)、神奈川県中郡国府村(現在の大磯町)の添田辰五郎という人物によって、初めて栽培に成功している。
サフランの花柱の収穫は、短い花期中に人の手で摘み取らねばならないため、極端に労働集約的な作業になり、その結果大変高価なものとなっている。
【成分】
乾燥した雌しべには、配糖体クロシンという黄色の色素があり、化粧品や食品の着色料に応用されている。また、鎮痛、鎮静、通経の作用のあるサフラナールが含まれている。
【薬効と用い方】
生理痛、生理不順、風邪に用いられる。生理痛、生理不順などには、よく乾燥したサフラン 0.5 gを1回量にして、熱湯をカップに注いで飲む。サフランは通経作用が強いため、妊婦は使用してはならない。
風邪には乾燥した雌しべ10本に、熱い湯を注いで飲む。男子、女子ともに効果がある。
また、苦味および芳香性精油成分の消化促進、去痰作用がある。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 サフラン, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 15₋16.
- 伊澤一男 1998 サフラン, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 802.
- ピーター・ゴールドブラッド, ジョン・マニング 1997 サフラン, 菅原敬(著) 植物の世界9,種子植物 双子葉類9 単子葉類1. 朝日新聞社. 317.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
形態
- 葉の形質
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葉はやせた線形で、秋に包葉の間から束になって芽生え、花後一段と生長し、長さ 20~30 cmになる。翌5月には枯れる。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 サフラン, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 15₋16.
- ピーター・ゴールドブラッド, ジョン・マニング 1997 サフラン, 菅原敬(著) 植物の世界9,種子植物 双子葉類9 単子葉類1. 朝日新聞社. 317.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
- 茎(幹)の形質
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地下にはほぼ丸い鱗茎がある。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 サフラン, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 15₋16.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
- 花の形質
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鱗茎から葉とは別にのびた軸頂に1個あてつき、直径 3 cmほどのロート状で淡紫色の花被片が開く。
花被片は6枚で、やや濃い紫色の筋が通っており、もとの方はかなり細長い筒状をしている。
雄しべ3、雌しべの花柱は3本に分かれ、鮮やかな橙赤色をしている。
葯は黄色、子房は長い筒状で、花柱1は白い糸のように細長く、柱頭の先はかなり大きく3裂し、やや多肉質化する。黄赤色をしており、かぐと特有の香りがあり、味は少し苦い。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 サフラン, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 15₋16.
- ピーター・ゴールドブラッド, ジョン・マニング 1997 サフラン, 菅原敬(著) 植物の世界9,種子植物 双子葉類9 単子葉類1. 朝日新聞社. 317.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン
関連情報
- 栽培方法
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なるべく大きめの球根を求めて、8月下旬~9月上旬に、株間 10 cmぐらいあけて植え、球根の高さの約3倍の土をかける。11月には雌しべが採取できる。
翌年4~5月に球根を堀り上げ、乾燥して貯蔵し、その年の8月下旬に植え付ける。
採取時期は花が盛りの10~11月ごろ、当日開花したものの雌しべの真っ赤に色づいた部分を手でとって、日陰か室内の風通しのよい所で乾燥させる。
参考文献
- 伊澤一男 1998 サフラン, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 802.
最終更新日:2020-05-25 ハリリセンボン