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チューリップ(Tulipa gesneriana)の分類 ユリ科(Liliaceae)
チューリップ(Tulipa gesneriana)の概要 Tulipa

チューリップ(Tulipa gesneriana)

【 学名 】
Tulipa gesneriana L.

基本情報

亜種・変種・品種

チューリップ属には60~100品種が知られている。西ヨーロッパから中央アジアの乾燥した半砂漠や草原地帯にかけて分布するが、変異の中心はなんといっても中央アジアにある。

参考文献

  • 河野昭一 1997 チューリップ, 八尋洲東(編) 植物の世界10,種子植物 単子葉類2. 朝日新聞社. p. 24-26.

最終更新日:2021-03-17 ハリリセンボン

人間との関係

一般にチューリップという名で呼ばれて馴染み深い植物は、トゥリバ・ゲスネリアナ(Tulipa gesneriana)を母種とする園芸品種で、今日では非常に数多くの品種が広く世界中で栽培されている。江戸時代に日本に導入され、古くはウッコンソウと呼ばれていた。「鬱金香」という感じを当てることもあるが、牧野富太郎によると間違いであるという。

【チューリップ栽培の歴史】
チューリップがトルコからヨーロッパに導入されたのは16世紀以降のことだが、中東諸国ではそれ以前から栽培化されており、古い美術品やタイルにはチューリップの花模様が多く見られる。トルコでは、オスマン帝国のスレイマン1世(在位1520~66)の時代には既に多くの品種がつくられ、国花にもなっていた。

チューリップをヨーロッパへ紹介したのは、神聖ローマ帝国のトルコ駐在大使ブスペックである。イスタンブール付近でチューリップの栽培を初めて見たとき、その名をトルコ人に尋ねると、花の形がツルバン(ターバン)に似ているといったのを花の名前と勘違いして、以来それが伝えられチューリップと呼ばれるようになったという。

その後チューリップはイギリスやフランスにも渡り、上流階級の間で異状なまでの人気を呼んだ。やがてオランダを中心に1634~37年にかけて、歴史に残る「チューリップ狂時代」が到来した。

新品種の球根に法外な高値がついて、投機の対象になり、一夜にして巨万の富を得るものや逆に破産する者が続出し、ヨーロッパ経済は大混乱に陥った。記録に残るものでは、オランダでピッケリイという品種が馬車2台のコムギ、馬車4台のオオムギ、雌ウシ4頭、ブタ3頭、ヒツジ12頭、ワイン2樽、ビール4樽、その他寝台などの家具を合わせて、2500フローリン相当で取引されたという。フランスでも新品種がビール工場と交換されたとか、娘の嫁入りの持参金代わりにされたとか、様々な逸話が残されている。オランダ政府は1637年、投機売買の禁止令を出し、鎮静化を図ることとなった。

チューリップが日本に紹介されたのは、江戸末期の文久年間(1861~64)だが、栽培が広がったのは日露戦争のころ、球根生産が始まったのは1919年、新潟県新津市周辺であった。その後は栽培面積も着実に増加し、現在では新潟、富山両県を中心に日本海側の各県で合計650ha、1億3000万球を生産している。

チューリップには約3000の品種があり、日本ではおよそ200品種が流通している。八重咲き系や花被片の縁が切れ込み波打つバロット系は以前から多かったが、最近は変わった花形の品種も目に付く。フリンジド系は、花被片の縁に細かい切れ込みがあり繊細な感じを与える。ビリディフロラ系は白、黄、橙などの地色に、緑色の縦絞り模様が入る。これらの変わり咲き系統は交配によってつくりだされたものではなく、突然変異によってできたもので、オランダのように大面積の栽培をしているところでは、変わり咲きを増殖させて品種として産業化している。

またカウフマンニアナ系、グレイギイ系など大型の原種は、今世紀初めことから知られていたが、近年これらの種間雑種も育成され人気を呼んでいる。その一方、小型で山草風の原種も注目され、トゥリパ・クルシアナ(Tulipa clusiana)やトゥリパ・バタリニイ(T.batalinii)など多くが栽培化されている。

参考文献

  • 河野昭一 1997 チューリップ, 八尋洲東(編) 植物の世界10,種子植物 単子葉類2. 朝日新聞社. p. 24-26.
  • 萩屋薫 1997 チューリップ栽培の歴史, 八尋洲東(編) 植物の世界10,種子植物 単子葉類2. 朝日新聞社. p. 27.

最終更新日:2021-03-17 ハリリセンボン

形態

葉の形質

葉は線形、卵形、または広披針形である。2~4枚の葉をつける。

参考文献

  • 河野昭一 1997 チューリップ, 八尋洲東(編) 植物の世界10,種子植物 単子葉類2. 朝日新聞社. p. 24-26.

最終更新日:2021-03-17 ハリリセンボン

茎(幹)の形質

地下にやや丸みがかった鱗茎をもつ。花茎は直立している。

参考文献

  • 河野昭一 1997 チューリップ, 八尋洲東(編) 植物の世界10,種子植物 単子葉類2. 朝日新聞社. p. 24-26.

最終更新日:2021-03-17 ハリリセンボン

花の形質

花は広鐘形、色彩は変異に富むが、原種は白色に赤く縁取られたものである、とされている。

花は普通は茎頂に1個、上向きに咲かせる。花被片の色彩は変異に富み、深紅、赤、紫、オレンジ、黄、白や、これらの色が混じり合ってできた複雑な色模様までさまざまである。葯はその末端で花糸に連結する。

参考文献

  • 河野昭一 1997 チューリップ, 八尋洲東(編) 植物の世界10,種子植物 単子葉類2. 朝日新聞社. p. 24-26.

最終更新日:2021-03-17 ハリリセンボン

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