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ゲンジボタル(Luciola cruciata)の分類 ホタル科(Lampyridae)
ゲンジボタル(Luciola cruciata)の概要 Luciola

ゲンジボタル(Luciola cruciata)

【 学名 】
Luciola cruciata Motschulsky, 1854

基本情報

大きさ・重さ

・成虫体長 :10~16 ㎜
・幼虫体長 :約 25 ㎜(老熟幼虫)
・卵の大きさ:長軸 0.5 ㎜ × 短軸 0.45 ㎜

参考文献

  • 2012 虫の卵ハンドブック - 書籍全体, 鈴木知之(著) 虫の卵ハンドブック. 文一総合出版. .

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

活動時期

成虫出現時期(日本国内):5~7月

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

分布

本州から九州にかけて分布する。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

生息状況

人里は人間活動がたいへん活発な環境であり、昭和初期以降、歴史上例のない速さで開発が進み、人々の生活様式の変化に伴い、ホタルの生息環境は破壊され、変貌を遂げた。とくに水系に依存するゲンジボタルは激減し、現在では全国10か所の生息地が国指定の天然記念物となっているほか、県・市町村で指定され保護されている地域もある。

参考文献

  • 大場信義 1998 ホタル類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. pp. 123-125.

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

保全の取り組み

全国各地で多数の団体や地方自治体が努力し、ホタルの里づくりが進められている。全国ホタル研究会は日本を代表する会で、ホタルの季節には全国各地でホタル観察会や鑑賞会を開いている。さらに、日本ホタルの会によって、都市化とともに失われていく人里環境をホタルを通して保全・再生しようとする活動が活発に推進されている。

以下の10か所のうち、「長岡のゲンジボタルおよびその発生地」は特別天然記念物に、その他は天然記念物に指定されている。(文化庁, 2019)

・沢辺ゲンジボタル発生地(宮城県)
・東和町ゲンジボタル生息地(宮城県)
・志賀高原石の湯のゲンジボタル生息地(長野県)
・岡崎ゲンジボタル発生地(愛知県)
・息長ゲンジボタル発生地(滋賀県)
・長岡のゲンジボタルおよびその発生地(滋賀県)
・清滝川のゲンジボタルおよびその生息地(京都府)
・木屋川・音信川ゲンジボタル発生地(山口県)
・山口ゲンジボタル発生地(山口県)
・船小屋ゲンジボタル発生地(福岡県)

参考文献

  • 大場信義 1998 ホタル類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. pp. 123-125.

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

別名・流通名・方言名

名産地京都の宇治にちなんで「宇治蛍」と呼ぶことがある。

参考文献

  • 2006 新装版山渓フィールドブックス 甲虫 - 書籍全体, 黒沢良彦、渡辺泰明(著) 新装版山渓フィールドブックス 甲虫. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

人間との関係

夏の風物詩としてもっとも親しまれてきた昆虫の1つである。水田をとりまく身近な水辺で生息していただけに、水田の維持管理の中で繁殖してきた。長いあいだ人間との共存関係にあったホタルを扱う文学、詩歌、短歌、俳句は数えきれない。美しい日本の原風景と融合し、昔の人々はホタル狩りを楽しみ、子供たちはホタルブクロの花の中でホタルの光りを鑑賞した。不思議にホタルの光は日本人の心を揺さぶる力がある。

参考文献

  • 大場信義 1998 ホタル類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. pp. 123-125.

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

形態

成虫の形質

体は黒色。前胸は淡赤色で正中に暗色の縦線があり、線の中央は広がる。腹部後方は黄白色。眼は大きく半球状で両眼間は陥没し、小点刻を具える。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

幼体の形質

前胸背板の黒色の硬皮板はひし形。体色はやや濃い。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

卵の形質

回転楕円体。孵化間近になると、卵内の幼虫は刺激に対して発光する。

参考文献

  • 2012 虫の卵ハンドブック - 書籍全体, 鈴木知之(著) 虫の卵ハンドブック. 文一総合出版. .

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

地理的変異

形態や遺伝子から東日本型と西日本型(もしくは種レベル)に分けられるとするが、幼虫における区別点は不明。また、東日本型と西日本型は発光パターンが異なることも知られており、中部日本を境にすみわけている。

参考文献

  • 大場信義 1998 ホタル類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. pp. 123-125.

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

生態

幼虫の生息環境

主に河川の上中流域の渓流。

ホタル科は熱帯地方に広く分布しており、世界で約2000種が知られているが、幼虫期が水生である種は大変少ない。日本からは9属40余種の記録があるが、幼虫が水生の種はゲンジボタルとヘイケボタル、クメジマボタルの3種のみである。

参考文献

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成虫の食性

成虫は口器が貧弱で餌を食べず、草葉上の水滴をなめる。

参考文献

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幼虫の食性

カワニナ類

参考文献

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成虫の天敵

クモ類が最も多く、サワガニ、キリギリス類などがこれまでに知られている。

参考文献

  • 大場信義 1998 ホタル類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. pp. 123-125.

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

ライフサイクル

関東地方では6月に成虫が出現し、配偶行動後にメスは河岸のコケなどに500~1000個産卵する。卵は約30日でふ化し、約 2 ㎜の幼虫は水中で小さなカワニナを捕食し、10か月以上をへて5回脱皮し、終齢幼虫となる。十分に成長した幼虫は上陸し、土に潜って蛹室を作る。約40日を経過し、羽化した成虫が再び地上に現れる。寒冷地では羽化までに1年以上を要することもある。

参考文献

  • 大場信義 1998 ホタル類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. pp. 123-125.

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

活動時間帯

昼間は草むらにとまり、夜になると飛び出す。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

孵化・脱皮・羽化

冬を越した幼虫は3月下旬~4月下旬に水から上がり、地下 4~5 ㎝のところに 4~5 ㎝の楕円形をした蛹室を作り蛹化する。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

生殖行動

交尾は夜に行い、数時間もかかる。発光するのは未交尾のものが多く、交尾後や産卵後の個体は光が弱い。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

産卵

雌は水際の石や土、幹などに生えた苔の上に100卵以上をまとめて産み付ける。メスの総産卵数は500~1500個。

参考文献

  • 2012 虫の卵ハンドブック - 書籍全体, 鈴木知之(著) 虫の卵ハンドブック. 文一総合出版. .

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

関連情報

外来種としての影響

各地に放流されていることから遺伝的撹乱が生じていることも報告されている。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

種・分類一覧