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オオミノガ(Eumeta variegata)の分類 ミノガ科(Psychidae)
オオミノガ(Eumeta variegata)の概要 Eumeta

オオミノガ(Eumeta variegata)

【 学名 】
Eumeta variegata Snellen, 1879

基本情報

大きさ・重さ

・成虫開張:雄 32.0~40.5 ㎜
・成虫体長:雌 25~35 ㎜(液浸標本)
・幼虫体長:雄 約 20 ㎜ 雌 約 35 ㎜
・ミノの長さは約 50 ㎜に達する。

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最終更新日:2020-08-09 ひろりこん

活動時期

成虫出現時期(日本国内):5月下旬から7月上旬

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分布

本州(関東・中部地方以西)、四国、九州、対馬、南西諸島;中国、インド、ネパール、東南アジア、台湾からニューギニア島、オーストラリアまで東洋の熱帯から亜熱帯にかけて広く分布する。

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生息状況

本種は1995年に福岡県や大阪府で中国から侵入してきたオオミノガヤドリバエ Nearsomyia rufella による寄生が発見され、この寄生は1~2年のうちに急速に本州、四国、九州のオオミノガ分布域のほぼ全域に広がったと考えられ、各地で本種の個体数を激減させてしまった。四国高知県や関東地方北部などは比較的寄生が弱い。中国山東省での研究では、この地に移入されたこのヤドリバエは、オオミノガより低温に弱く、オオミノガの分布北限では寄生が低下するといわれている。関東地方北部でオオミノガが依然として観察されるのは冬季の低温の影響が考えられる。高知県で寄生が弱い原因は明らかではない。

しかし最近になって、関東、関西や四国の一部ではオオミノガの個体群が回復しつつあるという。原因はヤドリバエに寄生する寄生蜂の出現により、ヤドリバエが減少してきたためと推察されている

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分類学的位置付け

本種の分類は問題が多い。種 E. variegata はスラウェシ島から記載され、このほかに多くの学名があるが、その多くは variegata のシノニムとされている。日本から記載された japonica Heylaerts, 1884 、台湾から記載された formosicola Strand, 1915 、中国から記載された pryyeri Leech, 1888 などはスラウェシ島の variegata のタイプ標本の大きさや斑紋などに大差が認められないので独立種としては認めがたいが、これらは variegata との地理的変異を重視すれば研究者によっては亜種と認めることも可能であろう。日本産の個体は、翅形、色彩斑紋、大きさ、雄交尾器などいずれの形態形質からも、 variegata のタイプ標本とほとんど相違が認められない。

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人間との関係

チャノキや街路樹などの害虫であった。

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形態

成虫の形質

雄の前翅は翅頂がとがり、前縁部と後縁部は暗赤褐色、それ以外はより暗色。R₂脈からA₁脈までの翅脈にそう部分は細く黒褐色。r4室基半部、r5室外縁部およびm2室に透明斑をあらわし、その中でもr4室とm2室のものは明瞭。r5室のものはしばしば半透明黄色紋になり、m1室、m3室の外半部は黒褐色。前翅中室はM脈幹が分岐し、間室を形成する。CuP脈はA₁+A₂脈の中央より外側で融合し、A₂脈やA₁+₂脈から後縁にむかう二次的な距脈を複数生じる。後翅は一様に暗褐色。間室があり、Sc脈上部に二次的な距脈を生じる。

雌は無翅無脚型、太い円筒形のウジ状。頭部や胸部背面などをのぞいて全身の皮膚は膜質状で淡黄白色。頭部、胸部背面および第1腹節背面は光沢のある赤褐色に強く骨化し、前胸背部は背中線部で顕著な竜骨状の縦稜を形成し、その前端は頭部の上に強く張り出す。頭部に1対の短い角状突起を生じる。第7腹節の臀毛束はビロードで、微細な粉状の鱗粉で構成される。

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蛹の形質

[ミノ]
表面には餌植物の大小さまざまな葉片、葉柄、小枝の破片などを全面につけるが、チャミノガほど密にはつけない。頭部の脱皮殻はミノにかがりつけない。終齢幼虫のミノは吐糸で厚く頑丈に紡がれ、大人の手でも引き裂くことは困難。

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幼体の形質

頭部は黒褐色、胸部の背板は淡黄褐色で暗褐色縦線をもつ。腹部は雄では淡黄褐色、雌では黒褐色。

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生態

幼虫の生息環境

低地から低山地。かつては街路樹にも多くいた。

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幼虫の食性

柑橘類、モモ、ナシ、セイヨウリンゴ、カキノキ、クリ、マグワ、チャノキなど各種の広葉樹。

ときにはスギなどの針葉樹の葉などや、何らかの原因で樹木から離れ、あるいは1齢がバルーニング後に到着した結果、草本類(セイタカアワダチソウなど)を食べることもある。キョウチクトウなどの有毒植物からの記録は見られない。若齢期には若い枝の樹皮やミカンなどの果実の果皮も摂食する。

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幼虫の天敵

オオミノガヤドリバエ(Nearsomyia rufella)

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ライフサイクル

幼虫は孵化するとすぐに周りの植物をかじりとって円筒状のミノをつくり、成長するにしたがってミノを大きくしていく。幼虫は晩秋までに老熟してミノを固定化して老熟幼虫のまま越冬する。
翌年晩春にミノを固定化したまま摂食せずに蛹化、5月下旬から7月上旬に羽化する。雌は羽化しても蛹殻内にとどまる。雌は雄を夕刻に誘引し、この時間に交尾が行われ、引き続いて蛹殻内に産卵する。雌は寿命が長く、通常は幼虫が孵化する時点まで卵塊の収まった蛹殻の中にとどまる。1齢幼虫は母ミノから吐糸をのばして下垂し、多くは風に吹かれてバルーニングをする。
まれに第2化の成虫が秋季に発生することがあるが、この子世代の経過については不明。まれに越冬態も食をとる幼虫があり、これが上述の第2化の成虫になるのかもしれない。

参考文献

  • 広渡俊哉 1997 ミノガ類, 日高敏明(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科9:昆虫Ⅱ. 平凡社. p. 73.

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孵化・脱皮・羽化

雄の亜終齢幼虫は蛹化用にミノを固定してから晩秋に脱皮する。亜終齢の脱皮殻はミノ外に出すことも観察されず、ミノの内部にも認められないことから、終齢幼虫が食べてしまうものと思われる。
蛹化するときに幼虫は食餌植物の小枝などにミノを固着させるが、ときには樹幹や建物の壁などの平面に固定する。小枝の場合には、幼虫は枝に吐糸を環状に厚く巻き付け、これにつながるようにミノの前開口部を巾着状に閉じて太めの柄になるようにして結び付け、下垂した状態でミノを固定させる。平面に固定する場合は円形に厚く吐糸して基礎をつくる。
雌の羽化後の蛹殻は第1・2腹節の境界部が環状に裂けて、前部は分離離脱する。

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生殖行動

雄は雌を探して飛び回るが、雌は産卵に特化しており翅も脚もない。雌がいるミノを探し出した雄は、腹端をミノの入り口から差し込む。雌は頭を入り口に向けているので、雄は腹部をいっぱいにのばして雌の交尾口を探り当てなければいけない。

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産卵

3000個以上の卵を産む。

参考文献

  • 広渡俊哉 1997 ミノガ類, 日高敏明(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科9:昆虫Ⅱ. 平凡社. p. 73.

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