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フタモンアシナガバチ(Polistes chinensis)の分類 Eumenidae
フタモンアシナガバチ(Polistes chinensis)の概要 Polistes

フタモンアシナガバチ(Polistes chinensis)

【 学名 】
Polistes chinensis (Fabricius, 1793)

基本情報

大きさ・重さ

成虫体長:女王バチ 14~18 ㎜、働きバチ 14~16 ㎜、雄バチ 15~16 ㎜

参考文献

最終更新日:2020-08-12 ひろりこん

活動時期

成虫出現時期(日本国内):4~10月

参考文献

  • 2012 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅱ コウチュウ・ハチ・カメムシ他 - 書籍全体, 鈴木欣司、鈴木悦子(著) 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅱ コウチュウ・ハチ・カメムシ他. 緑書房. .

最終更新日:2020-08-12 ひろりこん

分布

北海道から九州までの日本全土、奥尻島、佐渡島、屋久島、沖縄諸島;中国大陸

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最終更新日:2020-08-12 ひろりこん

和名の解説

腹部第2節背板に1対の黄色い円形の斑紋があることから。

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亜種

沖縄諸島の集団は中国大陸のものと斑紋が似ているため、原名亜種の名があてられている。

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人間との関係

アシナガバチ類は幼虫の食物としてチョウ・ガの幼虫など各種の昆虫を狩る益虫であるが、人を刺すこともある。女王バチが巣を守っている間は人に対する攻撃性はほとんどないが、働きバチの羽化後は巣を守る習性が発達し、刺激すると攻撃するようになる。

腹端に毒針を持ち、刺されても大抵の人は痛みと腫れだけで数日後に回復するが、蜂毒にアレルギー体質の人は血圧低下、発疹、吐き気など全身症状を呈し、2回目以降は死亡することもある。

本種は6~8月と9~11月に人を刺す事故が多い。前者は草刈りや剪定、巣付近の通行などで巣を刺激し、働きバチにさされることが多い。後者は布団や衣類などの日干しのさい、離巣後の新女王バチが越冬のために内部に潜り込み、これを知らずに室内に取り入れたのち、ハチを圧迫して刺されることが多い。

参考文献

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形態

成虫の形質

体全体は黒色で、前伸腹節に縦斑が2つ、第2腹背板に目立つ1対の円紋がある。脚は基部を除き黄褐色で、翅は半透明、前翅前縁は黄褐色。

メスは前額に細い1横紋がある。頭楯は黄色で中央に黒色の横帯があるが、遊離して黒斑になる個体もある。オスは顔面前部黄色で、頭楯の前縁中央は突出するが先端は鈍い。

近縁種トガリフタモンアシナガバチ P. riparius Yamane はオスの頭楯前縁が鋭くとがること、メスの大腮がふつう全体的に黄色であること、前胸背後縁の黄条が前方で途切れずに前胸背板前縁の黄条とつながることから区別できる。

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生態

成虫の生息環境

郊外の人家周辺、農村地帯など。

本州・四国・九州ではセグロアシナガバチとともに人家付近にはもっとも普通なアシナガバチである。

家屋の屋根瓦の下、軒先、木の枝、草むらなどに40~60房の長円形の巣を作る。働きバチの出現後、巣は急速に発達し、総育房数は300~1000房となる。

巣は横向きか下向きで、形は長円形が多い。育房の大きさは、本州以南では直径 5~6 ㎜、深さ 15~28 ㎜であるが、北海道と本州の中部山地では著しく深く 25~35 ㎜となる。繭の蓋の色は白い。

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成虫の食性

ヤブガラシなどの花の蜜やアブラムシの甘露

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幼虫の食性

成虫がアオムシ、ヨトウムシなどのチョウ類幼虫やバッタ類の成虫、幼虫を狩り、肉団子として持ち帰り与える。

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ライフサイクル

関東地方では4~5月に越冬から覚めた女王が単独で巣を創設する。6月中旬に5~10個体の働きバチが羽化すると母娘共同営巣期を迎え、巣は急速に拡大する。働きバチの羽化数は30~100個体に達し、つくられる育室の総数は平均200~300で、ときに1000室にも達する。

8月の初~中旬になると働きバチの羽化は停止し、代わって新女王とオスの羽化が同時期に起こる。新女王は巣上で静止し、巣外に出ることはない。繁殖個体の羽化とともに働きバチ数は減少し、9月中旬にはほとんどいなくなる。春から活動してきた女王もこのころまでに死亡する。

新女王とオスは晴れた暖かい日に巣外に飛び出し交尾し、交尾を済ませたメスは樹洞などに移動して越冬に入る。こうして巣上のハチはしだいに減り、9月末になると巣はほとんど空になって、コロニー活動は終了する。新女王のみが越冬し、翌春に活動を再開する。

参考文献

  • 山根爽一 1998 フタモンアシナガバチ, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. pp. 42-43.

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特徴的な行動

夜、女王バチは巣の裏に隠れるようにして眠る。

参考文献

  • 2012 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅱ コウチュウ・ハチ・カメムシ他 - 書籍全体, 鈴木欣司、鈴木悦子(著) 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅱ コウチュウ・ハチ・カメムシ他. 緑書房. .

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その他生態

オスとなる半数体の卵の大部分は働きバチに由来することが示唆されている。

参考文献

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関連情報

味や食感

セグロアシナガバチ、コアシナガバチなどと同様に食用になる。長崎、栃木、奈良、島根、埼玉、静岡、鳥取、愛媛、高知、宮崎など多くの県で幼虫と蛹を揚げ物やつけ焼きなどにして食べていた。

白山山麓地帯ではかつて幼虫や蛹を食べていたが、山で働く人たちは、蛹をクワの葉に包んで炭火で焼いて、クワの葉と一緒におやつ代わりに食べていたという。岡山県の南部でもハチの子と言ってアシナガバチの幼虫を醤油と砂糖で煮て、おかずとしていた。

参考文献

  • 2008 世界昆虫食大全 - 書籍全体, 三橋淳(著) 世界昆虫食大全. 八坂書房. .

最終更新日:2020-08-12 ひろりこん

種・分類一覧