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コオロギ上科(Grylloidea)の分類 昆虫綱(Insecta)
コオロギ上科(Grylloidea)の概要 バッタ目(Orthoptera)

コオロギ上科(Grylloidea)

【 学名 】
Grylloidea

基本情報

分類学的位置付け

昆虫綱 バッタ目 コオロギ亜目 コオロギ上科
下位分類としてはコオロギ科、マツムシ科、ヒバリモドキ科が属する。

参考文献

最終更新日:2020-06-25

形態

成虫の形質

体は扁平で、体色は黒から褐色である。触角は長く、30節以上で形成される。多くは成虫になって3日ほどすると後翅を落としてしまう。翅は左右非対称で、一方の翅に棒ヤスリのようにザラザラとしたヤスリ器 (バイオリンでいう弦) がついている。対して、もう一方は摩擦器やコスリ器 (バイオリンでいう弓) と呼ばれる器官が付いている。摩擦器はほかの部位よりも多少盛り上がっていて、この摩擦器とヤスリ器を擦り合わせることで鳴き声を出す。聴覚器官として前脚の脛節に鼓膜器官を持っている。産卵器は、左右の片が接する面に特別な形状はなく、全体として管状になる。

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生態

成虫の生息環境

多くは地表で生活しているが、マツムシ類などに樹上性のものもいる。

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成虫の食性

多くは雑食性

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最終更新日:2020-06-25

発音(鳴き声)

雄は雌へアプローチをするために翅を擦り合わせることで鳴き声を出す。音色は種類によって異なる。

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最終更新日:2020-06-25

ライフサイクル

生活史は以下の5型に大別される。

・卵越冬1化型
…遺伝的に固定された卵休眠が見られ、晩夏から秋にかけての短日条件によって若虫の成長が促進される。エンマコオロギ、スズムシ、マツムシ、カンタンなどが該当する。

・卵越冬2化型
…年2化であり、盛夏と秋に2度成虫が発生する。基本的には卵休眠であるが、それは遺伝的に固定されたものではなく、温度や光周期などの環境要因によって決定される。盛夏に産み付けられた卵は不休眠卵であり、秋に産み付けられた卵は休眠卵である。関西や九州のマダラスズ、ヤチスズ、シバスズ、ハマスズなどが該当する。

・若虫越冬1化型
…幼虫で越冬し、短日から長日へと日長が変化することによって発育が促進される。成虫は晩春から初夏に発生する。ナツノツヅレサセコオロギ、エゾスズなどが該当する。

・若虫越冬2化型
…夏の前半に1世代を終え、2世代は秋の低温・短日のため幼虫で越冬し、翌年の晩春から初夏に羽化する。四国や九州のタイワンエンマコオロギやタンボコオロギなどが該当する。

・周年発生型
…成虫、卵、幼虫が1年中見られる。カマドコオロギ、フタホシコオロギ、リュウキュウマツムシ、ヤエヤマクチキコオロギなどが該当する。

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活動時間帯

夜行性

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最終更新日:2020-06-25

生殖行動

交尾の際には、雄が翅を閉じて雌の体の下に潜り込むもの (コオロギ科とヒバリモドキ科の一部) と、前翅の基部に蜜腺があり、雌になめさせるために翅を立てたままで交尾に至るもの (マツムシ科、ヒバリモドキ科の一部) がある。

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特徴的な行動

後肢を歩行にも普通に使い、完全にたたむことなくジャンプすることが多い。翅を使って鳴くものでは、鳴く際には翅を立てる。

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関連情報

採集方法

以下のような方法で採集できる。

・ルッキング法
…鳴いている虫をシンプルに目で見て探し、気づかれる前に見つけて捕獲する方法。

・追い出し法
…河川敷や田んぼの畦、林縁などに山積みされた藁や刈り取られてまとめられた雑草を掘ったり足で跳ね除けたり踏んだりして、隠れていた虫が驚いて飛び跳ねてきたところを捕まえる方法。

・めくり法
…石や岩、倒木などを持ち上げ、下に潜んでいる虫を探す方法。

・外灯回り法
…外灯の光に集まってくるものを探す方法。

・灯火採集 (ライトトラップ)
…理屈は外灯回りと同じで、紫外線を含む光源を利用することで走光性がある種を呼び寄せる。外灯回りと違い採集者の任意の場所に虫を呼ぶことができるため、より精度の高い採集ができる。

・スイーピング法
…虫網を使ってターゲットが潜んでいそうな藪や草むらをランダムに掬い、無作為に虫を採る方法。草上性のヒバリモドキやカンタン類などの採集に絶大な効果を発揮することがある。

・ビーティング法
…カンタンやアオマツムシなど灌木などを住処とするコオロギ類を採集するのに有用な方法で、ターゲットが潜んでいそうな灌木の下にビーティングネットを構え、枝を叩き棒で叩いて虫を落とし、ネットに落ちてきた虫を捕獲する。

・ベイトトラップ
…プラスチックコップに餌 (ベイト) を入れ、地面に埋めたり、木にくくりつけたりすることで、虫をおびき寄せ、コップに落ちた虫を採集する方法。

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最終更新日:2020-06-25

飼育方法

プラケースにピートや黒土、ココハスクなどの床材を敷いて飼育する。コオロギ類の多くは土の中に産卵するため、床材はそのまま産卵床にもなるので、最低でも産卵管の2倍ぐらい (できれば3倍ぐらい) の深さにしておく。土の湿度は基本的には濡れすぎず、乾きすぎずぐらいの湿度 (両手で固めて地面に立てておいたらポロっと形が崩れる程度) がよいが、適した湿度は種によって異なり、ハマスズやカワラスズ、スズムシなど砂地に住む種はやや乾燥した環境を好む一方で、ヤチスズやエゾスズ、チビスズなど地表性の小型種はより湿った環境を好む。隠れ家として欠けた植木鉢や木の皮、落ち葉などを用意する。
餌は鳥のすり餌や各種メーカーが販売している専用フードなどの人工飼料および白菜、ナスなどの野菜を与える。人工飼料は湿った地面の上に直接置くとすぐにカビが生えたり、ダニが発生する原因にもなるので、餌皿の上に置く。
マツムシなどなんらかの植物に依存した種、およびアオマツムシなど樹上性の種は、プラケース (ネットケージでもよい) を縦におき、飼育する種に見合った植物や枝と植え込み白菜 (プリンカップなどに水分を含ませた水苔を入れ、白菜の葉1枚を植えたもの) を入れ、その中で飼育する。

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最終更新日:2020-06-25

種・分類一覧