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スズムシ(Meloimorpha japonica)の分類 Phalangopsidae
スズムシ(Meloimorpha japonica)の概要 Meloimorpha

スズムシ(Meloimorpha japonica)

【 学名 】
Meloimorpha japonica (Haan, 1844)

基本情報

大きさ・重さ

・成虫全長:(撮影個体)雄 17.9 ㎜(頭頂から翅端まで)、雌 30.9 ㎜(頭頂から産卵器端まで)
・成虫体長:(撮影個体)雄 16.4 ㎜、雌 18.6 ㎜

日本直翅類学会編『バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑』(2006)より

参考文献

  • 市川顕彦 2006 スズムシ, 日本直翅類学会(編) バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑. 北海道大学出版会. 472.

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

活動時期

8~10月

参考文献

  • 山崎柄根 2008 スズムシ, 平嶋義宏、森本桂(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅲ. 北隆館. 83.

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

分布

北海道(帰化)、本州、四国、九州、対馬、種子島;韓国、中国、台湾

参考文献

  • 市川顕彦 2006 スズムシ, 日本直翅類学会(編) バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑. 北海道大学出版会. 472.

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

保全の取り組み

秋田県のスズムシ群棲地(南秋田郡五城目町小池字岡本森山周辺)は秋田県指定の天然記念物である。

参考文献

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

和名の解説

鈴のように澄んだ鳴き声から、この名前がついた。

古くはマツムシのことを「スズムシ」、スズムシのことを「マツムシ」と逆に呼んでいた。

参考文献

  • 2010 わかる!図鑑⑤ 野山の昆虫 - 書籍全体, 今森光彦(著) わかる!図鑑⑤ 野山の昆虫. 山と渓谷社. .
  • 2012 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅱ コウチュウ・ハチ・カメムシ他 - 書籍全体, 鈴木欣司、鈴木悦子(著) 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅱ コウチュウ・ハチ・カメムシ他. 緑書房. .

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

別名・流通名・方言名

りんりん虫、ちんちろりん

参考文献

  • 2012 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅱ コウチュウ・ハチ・カメムシ他 - 書籍全体, 鈴木欣司、鈴木悦子(著) 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅱ コウチュウ・ハチ・カメムシ他. 緑書房. .

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

人間との関係

江戸市中で虫売りが初めて流行したのは寛政年間(1762~1801)のこと。神田に住む越後生まれのおでん屋忠蔵が、行商の折に根岸の里で聞いたスズムシの音に惹かれたのが始まりとされている。

はじめは1人で楽しんでいたのだが、そのうちに2、3匹を捕まえて帰るようになった。すると譲ってくれという人が多く、商売になりそうだと気が付いたらしい。

また、彼の客の1人で、青山辺に住む青山下野守(丹波篠山藩主)の家来で桐山という男がいた。彼はスズムシを壺に飼っていたが、その1年後の7月ころ、ふと中を覗くと意図せず若虫が生まれていた。

これをきっかけに忠蔵は、マツムシ、クツワムシ、カンタンなどを、人工飼育に成功した桐山のもとに持ち込み、おでん屋をやめて、人工飼育した虫を売り広めることに専念するようになった。

スズムシの場合、秋に瓶の中の土に産卵させたものを室内におき、翌年2月に押し入れなどで火鉢で加熱し、促成飼育して野生に先駆けて出荷して利益を上げた。

加温による飼育方法は、「あぶり」とよばれる。中国のコオロギ飼育で早くから行われていた方法だが、桐山はカイコの飼育方法を参考にした可能性もある。

参考文献

  • 加納康嗣 2008 江戸東京の虫売り:鳴く虫分化史, 大阪市立自然史博物館、大阪自然史センター(編) 鳴く虫セレクション. 東海大学出版会. 93.

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

形態

成虫の形質

中型で、全身は黒く、特に斑紋はない。触角の基部や各脚の腿節付け根部分は白く、脛節、尾角などは黄白色。

雌は細めで、尾端にやり状の細長い産卵管をもつので、雌雄の判別は容易。

サワマツムシ属に似るが跗節は広がらない。

参考文献

  • 市川顕彦 2006 スズムシ, 日本直翅類学会(編) バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑. 北海道大学出版会. 472.
  • 山崎柄根 2008 スズムシ, 平嶋義宏、森本桂(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅲ. 北隆館. 83.

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

生態

成虫の生息環境

林間の草むらやササ、ススキに覆われた暗い地面にすみ、湿った土壌を好む。

よく知られている割には、どこにでも生息するような種ではなく、比較的自然度の高い環境に生息する。そのため都市部で鳴き声を聞く機会はあまり多くない。

まれに都市公園などで一時的に声が聞こえることがあるが、その多くは人為的なものと思われる。

参考文献

  • 山崎柄根 2008 スズムシ, 平嶋義宏、森本桂(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅲ. 北隆館. 83.
  • 2016 鳴く虫ハンドブック - 書籍全体, 奥山風太郎(著) 鳴く虫ハンドブック. 文一総合出版. .

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

発音(鳴き声)

雄は地上近くの草むらや石のすきまなどで、はねを立ててこすり合わせて鳴く。

飼育下でよく聞く「リーーン、リーーン」という鳴き声は誘惑音といい、雌が近くにいるときに雄が発するプロポーズの鳴き方である。

雌が近くにいないことがほとんどの野生化では、雌が近づいてくるまで「リンリンリンリン」というやや寂しげな呼び鳴きをする。

参考文献

  • 2010 わかる!図鑑⑤ 野山の昆虫 - 書籍全体, 今森光彦(著) わかる!図鑑⑤ 野山の昆虫. 山と渓谷社. .
  • 2016 鳴く虫ハンドブック - 書籍全体, 奥山風太郎(著) 鳴く虫ハンドブック. 文一総合出版. .

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

ライフサイクル

本州では幼虫は6月上旬~8月下旬、成虫は8月上旬~10月下旬に見られる。

卵越冬の年1化。8月上旬ごろからよく鳴き始め、10月に入るころには声がきこえなくなることが多い。

参考文献

  • 2016 鳴く虫ハンドブック - 書籍全体, 奥山風太郎(著) 鳴く虫ハンドブック. 文一総合出版. .

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

活動時間帯

おもに夜

参考文献

  • 市川顕彦 2006 スズムシ, 日本直翅類学会(編) バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑. 北海道大学出版会. 472.

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

孵化・脱皮・羽化

成虫の後翅は羽化後しばらくして脱落する。

参考文献

  • 山崎柄根 2008 スズムシ, 平嶋義宏、森本桂(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅲ. 北隆館. 83.

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

生殖行動

雄はすぐ近くに雌を見つけると、後ろ向きになりバックしながら雌ににじり寄ることがある。

参考文献

  • 2016 鳴く虫ハンドブック - 書籍全体, 奥山風太郎(著) 鳴く虫ハンドブック. 文一総合出版. .

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

産卵

1頭で50~100個の卵を産む。

参考文献

  • 安藤俊夫・中原直子 2008 鳴く虫を飼おう, 大阪市立自然史博物館、大阪自然史センター(編) 鳴く虫セレクション. 東海大学出版会. 196-199.

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

関連情報

飼育方法

他種に比べて一番飼いやすい鳴く虫といえる。飼育箱は、ガラス水槽、プラスチック容器、かめなどで特に選ばない。

(1)容器の準備
スズムシは明るいところと、直接の風を好まない。飼育する容器はガラス水槽、プラスチック容器が観察できて管理しやすいが、「かめ」のようなものでもかまわない。
飼育しようとする容器の底部分の4隅に排水孔( 5~7 ㎜)を開け、網戸用のネット( 5×5 ㎝くらい)を敷く。ネットは土がこぼれないようにするためと、孔に土が詰まって排水ができなくならないようにするために、必要である。

・蓋
容器には蓋をかける。網戸用のネットがよい。密閉される蓋は新鮮な空気の流通を遮断するので、病気などが発生し適さない。

・土やミズゴケ
土:ほかに使用したことのない清潔な土(園芸店などで販売されている赤玉土の小粒など)を、厚さ 3~5 ㎝にして入れる。
ミズゴケ:足場として土の代わりに、薄く( 1 ㎝以下)ミズゴケを敷く方法もあるが、厚いとその部分に産卵する恐れがあるので注意が必要。ミズゴケに産卵させるためには、容器( 10 ㎝× 10 ㎝×深さ 5㎝くらい)の底に数か所排水孔をあけて、ミズゴケを 5 ㎝くらいにつめたものを、スズムシ容器に入れれば産卵する。

・脱皮時のとまり場所・生活の場所
スズムシは主に地表面で生活をしているが、地面の上に直接いるのは好まない。また過密にならないよう分散させること、脱皮時につかまる場所が必要なことから、枯木(太さ 5~8 ㎝くらい、長さは容器に合わせて)、木板(杉板など)、素焼鉢、炭などをよく洗って入れるとよい。蓋との間が狭いと給餌のときにスズムシが飛び出すため、目安として蓋との間を 7~10 ㎝くらい離す。

(2)入れる数
スズムシは比較的おとなしい性質だが、オス同士は闘争心がある。そのため、鳴いているオスにほかのオスが後ろ脚で蹴っているようすも観察される。入れる数が多いとスズムシ本来のリーンリーンリーンでなくリンリンリンと風情のない喧嘩鳴きとなってしまうので、少ないほうがよい。目安は 3~5 ㎝以上間隔に1頭程度。つまり容器の底面積(㎠)÷ 9~25(㎠)の匹数にする。

(3)エサ
ナス・キャベツ(消毒のないもの)や、ペット屋さんで販売されているスズムシ用エサ、すり餌、フレーク状金魚エサ、カツオブシ、ニボシを与える。スズムシのエサはカビが発生しやすく腐敗しやすいので、直接地面に置かないようにする。孵化直後は幼虫が小さいので容器の高さは 1 ㎝以下か、または登れるようにミズゴケを敷いた上に置いてエサが食べられるようにするとよい。

(4)水
浅い( 1 ㎝以下)容器に転落防止と足がかりにミズゴケを入れて吸水させる。孵化から体長 10 ㎜くらいまでは容器の隅にビニールを敷いてその上にミズゴケを置くとよい。ミズゴケに水分があればそれを適当に飲んでいる。

(5)卵の管理
よく起こる失敗の原因を例に、卵の管理のポイントを紹介する。

・1年目の失敗
翌年孵化しなかったとすれば原因は、産卵した後の越冬時の管理が悪かったこと、温かいところに置いたので孵化が早く気が付いたときは遅かったこと、孵化したがアリに食べられてしまったことなどがある。管理、置き場所などに気を付けるとよい。また、越冬時の管理では2月中旬ごろまでの乾燥は致命傷にはならないが、3月中旬から孵化する6月中旬の乾燥は致命傷になる。

・2年目の失敗
2年目に失敗するとすれば、原因の多くは産卵土をそのまま使用したことが考えられる。同じ土を使用すると病気などで失敗するので、毎年、必ず新しい赤玉土を使用する。

・越冬卵の温度管理の失敗
霧吹きで湿らせる方法は、失敗を引き起こす。なぜなら、霧吹きで湿らせようとしても、表面だけ濡れて、底の部分まで行かずに乾燥してしまうか、あるいは乾燥させてはいけないと思って過湿状態になり、卵が窒息状態で死んでしまうためである。
容器の底部に排水用の孔を開けておくと、ジョウロなどで思い切って給水でき、乾燥や水漬けは避けられる。また、給水を忘れないように、月の初めや中旬には点検するように決めておくとよい。
ミズゴケ容器に産卵したものも、コップか水道蛇口で水分を補給する。孵化時になったら土産卵と同様の管理を行う。

参考文献

  • 安藤俊夫・中原直子 2008 鳴く虫を飼おう, 大阪市立自然史博物館、大阪自然史センター(編) 鳴く虫セレクション. 東海大学出版会. 196-199.

最終更新日:2020-05-29 ひろりこん

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