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アジアミツバチ(Apis cerana)の分類 Apidae
アジアミツバチ(Apis cerana)の概要 Apis

アジアミツバチ(Apis cerana)

【 学名 】
Apis cerana Fabricius, 1793

基本情報

大きさ・重さ

成虫体長(日本亜種):女王 13~17 ㎜、働き蜂 10~13 ㎜、雄 12~13 ㎜

参考文献

  • 三田井克志 2014 二ホンミツバチ, 多田内修、村尾竜起(編) 日本産ハナバチ図鑑. 文一総合出版. 444.
活動時期

成虫出現時期(日本国内):3~11月(日本亜種)

参考文献

  • 三田井克志 2014 二ホンミツバチ, 多田内修、村尾竜起(編) 日本産ハナバチ図鑑. 文一総合出版. 444.
分布

西限はパキスタン・アフガニスタン、南東限はニューギニア島、北限は本州下北半島および中国北東部。ただし、ニューギニア島のものは人為分布。

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亜種

トウヨウミツバチ(A. cerana)はアジアのほぼ全域に分布し、数亜種を含む多様度の高い大きな種である。

・ A. c. cerana :原亜種(中国亜種)。中国を中心に、ヒマラヤ山地の高地を回り込むようにして、インドのカシミール地方まで、東アジアの温帯域に分布している。

・ A. c. japonica :日本亜種(ニホンミツバチ)。

・ A. c. india :インド亜種 。熱帯域に広く分布する。

・A. c. himalaya :ヒマラヤ亜種。ヒマラヤ高原に分布する。

中国の cerana についてはまだ欧米の科学者による他のアジア地域の亜種との比較検討はなされていない。そのため中国の研究者の見解をそのまま紹介すると、A. c. cerana のほかにも亜種レベルで、 skorikovi 、 abaensis 、 hainanensis が区別されるという。

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人間との関係

熱帯から亜熱帯起源と考えられているミツバチのなかで、セイヨウミツバチとトウヨウミツバチの2種のみが、木のうろなどの閉鎖空間に居を求め、そこを複数巣板で埋めることにより高い保温効率を手に入れ、温帯や亜寒帯まで広く分布するようになった。

しかし、いかに保温効率が高く、また冬の間は温度設定レベルを下げて蜜の消費を倹約するとしても、多数の働き蜂を擁したままの形で越冬するには、燃料としての多量の貯蜜がなければならない。

この越冬を見越して多量の蜜を貯蔵しようとする習性こそが、採蜜養蜂にとって大きな恩恵となり、人間生活にかかわるようになったといえる。

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形態

成虫の形質

日本亜種の形質

働き蜂は体色は通常黒褐色だが、ときに小楯板や、腹部第2、3背板が赤褐色を帯びる。

複眼は長立毛に、頭胸部は長立毛と短状毛に密に覆われる。

頭胸部に明瞭な点刻はなく、全面が鮫肌状を呈する。

近似種セイヨウミツバチとは後翅のM₃₊₄脈が翅端に向かって明瞭に伸長することで区別できる。

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蛹の形質

蛹の皮はとても薄いので(保護が行き届いていることの証拠)、眼の色の変化をはじめ、成虫に近づいていく様子が手に取るようにわかる。

雄蜂は働き蜂よりずっとしっかりした、真ん中に小孔の開いた繭を作る。

この小孔はトウヨウミツバチとサバミツバチ(A. koschevnikovi)特有のものだが、穴の機能はまだ謎のままである。

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幼体の形質

ミツバチの幼虫には眼も触角もない。

半透明の体の中に白く血管のように見えるのは気管系で、酸素は直接各組織、細胞に届けられる。

ミルクや蜜に浸かる側の気門は使えないので、気管系には左右をつなぐバイパスが発達している。

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生態

成虫の食性

花蜜がハチミツに「加工」され、幼虫を含むすべてのメンバーのエネルギー源となるほか、花粉はタンパク質、ミネラルなどエネルギー以外のすべての栄養源となる。

ハチミツは花蜜(ネクター)が濃縮されただけのものではなく、唾液中の酵素群により、ショ糖が転化されてグルコースとフルクトースになり、グルコン酸をはじめとする多種の有機酸が生成したものである。

花粉はだんごに丸められ、巣に持ち込まれると、採集者自身によって花粉巣房に入れられる。

その後、待っていた貯蔵係がすぐに頭でこれを固めるので、「蜂パン」とよばれる巣房内にためられた花粉は数十層からなっている。

花粉房はハチミツの場合のように蓋がされることはないが、保存が長期にわたる場合には、表層部は特に念入りに押し固められ、最上部に蜜を多めに施して封じられる。

このほかに、女王は若い働き蜂からローヤルゼリーをもらっている。

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幼虫の食性

働き蜂、雄蜂になる幼虫は、育児蜂が吐き出して与えるミルクの上に浮かんだ形で、それだけを食べて育つ。

ミルクは若い働き蜂の頭の中、脳のまわりを取り巻くように存在する下咽頭腺で作られ、大顎腺から出される脂肪酸などと混ぜ合わされてヨーグルト状となる。

女王蜂になる幼虫はローヤルゼリーを与えられて育つ。

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成虫の天敵

キイロスズメバチやオオスズメバチ、そのほか大形のスズメバチ類はトウヨウミツバチの天敵となる。

しかし、トウヨウミツバチはこれらのスズメバチに対処するすべを持っている。

例えば、ニホンミツバチは、着地したスズメバチに対して、まず数匹が走り寄ってこれに取り付き、後はみるみるうちに加勢が加わり、蜂のボール(蜂球)をつくる。

その数100から300匹に達し、飛翔筋による発熱で内部温度は47℃まで上がり、20~40分後には熱で乾燥したスズメバチの死体が置き去りにされる。

また、オオスズメバチの集団攻撃に至ってしまった場合はむだな抵抗はせず、貯蔵食物と幼虫・蛹は明け渡して、女王蜂以下全員で新しい営巣場所へ逃去する。

マレーシアでも現地のトウヨウミツバチが Vespa analis という大型のスズメバチに蜂球をつくり応戦している様子が観察されているが、ニホンミツバチと異なり、ボール内の温度が最高でも45℃程度と低めで、かなり激しい刺針行動をともなっていたという(ニホンミツバチは46~48℃、刺針行動はなし)。

このほか、熱帯のトウヨウミツバチにとってはアリが大敵となっている。

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幼虫の天敵

ミツバチヘギイタダニはミツバチの蛹に寄生するが、本来の寄主であるトウヨウミツバチはこのダニに抵抗性をもつ。

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発音(鳴き声)

ミツバチの仲間では羽化後の女王蜂どうしが戦うとき、女王がピーピーピーピーッと美しい声で鳴き、自分の存在を誇示しているように見える。

このクイーン・パイピング行動は、続いて車がノッキングを起こしたときのような動きで振動を作り出す動きが見られることもある。

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孵化・脱皮・羽化

蛹化が近づくと巣房に蓋がされ、養蜂家はこれを「有蓋蜂児」と呼ぶ。

はじめに働き蜂がワックスで薄い蓋を作る。

蓋掛けのタイミングは働き蜂が幼虫からの匂いの微妙な変化を感知して決めるらしい。

そのあと、蓋の内側に幼虫が絹糸を吐いてごく薄い繭を作る。

ちょうどそれと前後して脱糞も行われる。

全幼虫期間の不消化物(おもに花粉の殻)と尿酸を多く含むゼリー状のおしっこをまとめて排泄するのである。

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生殖行動

成熟した雄は交尾飛行の時刻が近づくと巣門付近に移動し、燃料の蜜を働き蜂からもらって大空へ飛び出していく。

女王蜂も同じ時間帯に巣を飛び出し、10~40分くらいの飛翔の間に複数の雄と交尾する。

空中での交尾が成功し、射精が行われた瞬間、雄の体は硬直し、もちろん羽ばたきも止まってしまう。

女王がそんな雄をひっぱって飛ぶうちに、間もなく生殖腺の一部だけがちぎれて女王側に残り、雄は失神したまま地上に落ちて死ぬ。

女王蜂は雄の交尾器の一部である交尾標識を付けて巣に戻ってくる。

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産卵

女王は産卵に際し、自ら測定した巣房のサイズ情報により、雌(働き蜂)用と判断すれば受精嚢中に精子をかけて産み、雄用と見れば精子をかけず無精卵として産下する。

産卵をしていない休憩時はたいてい蜂児圏の外に出てじっとしており、その間、働き蜂が女王を囲むように取り巻き、女王蜂の体に触角の先で触れたり、口吻でなめたりしている。

それにより「女王物質」が働き蜂の間に広がり、働き蜂の不妊化が維持される。

もし女王が何らかの事故で急死した場合、女王蜂、次いで幼虫がいなくなるので、女王蜂と幼虫からの抑制が解け、働き蜂の卵巣が発達し始め、産卵することがある。

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特徴的な行動

ミツバチの収穫ダンスによる情報伝達は、まさに言語といってよい域に達している。

(1)花までの距離をコード化して定量的に伝えること
(2)方向を太陽コンパスとして、しかもそれを重力場に対する形に変換して表現していること
(3)蜜源の質や量までもダンスの持続時間で表現していること

の3点において他に例を見ない。

ダンスにもいろいろあるが、最も重要なのはよい蜜(花粉)源を見つけた場合に、仲間をそこへ招集するときのダンスである。

情報の発信者であるダンサーは8の字を描きながら、その中央線を通るところで翅の細かい上下動により 250 ㎐前後の音を出し、同時に尻も振る。

この音の長さが蜜源までの距離を示し、そのときの重力場に対する体軸の角度が方向を示している。

受信者のほうは、触角をかざしてその共振から情報を得ていることがわかっている。

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関連情報

味や食感

分布域の多くで蜜や幼虫が食用になっており、加熱した幼虫をかむと甘い味がするが、味のないチューイングガムのような皮膚が口に残るという。

各国のトウヨウミツバチの食べ方を紹介する。

・中国:蜂蜜、蜜蝋、蜂毒、ハニー・ゼリー、花粉などが重要な産物であるが、幼虫を油でいためて食べたりした。

・タイ:幼虫が詰まった巣板を炭火の上で焼いたり、あるいはバナナの葉などで包んで炭火の上に置いて蒸し焼きにしたものも売っている。

・インドネシア(ジャワ島):トウヨウミツバチが飼育され、蜂蜜を採る一方、貯蜜量が十分でないときは、幼虫をタンパク質源として食べるところがある。ジャワ島東部の高原にあるマラン(Malang)市とその周辺の農村では、住民はトウヨウミツバチの幼虫をよく食べていて、幼虫の入った巣板が市場で売られている。食べ方はボトッ料理(バナナの葉に包んで蒸し焼き)が一般的であるが、また、ハチの子でスープを作ることも行われている。

参考文献

種・分類一覧