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セイヨウミツバチ(Apis mellifera)の分類 Apidae
セイヨウミツバチ(Apis mellifera)の概要 Apis

セイヨウミツバチ(Apis mellifera)

【 学名 】
Apis mellifera Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

成虫全長:女王蜂 13~20 ㎜、働き蜂 10~13 ㎜、雄蜂 12~13 ㎜

参考文献

分布

アフリカ南端からスカンジナビア

参考文献

生息状況

2000年代半ば以降、ミツバチの大量死が世界各地で報告されるようになった。北半球の4分の1のミツバチが姿を消したという報告もある。
その原因として、ネオニコチノイド系農薬などが指摘されている。

参考文献

亜種

<亜種>
少なくとも31亜種に分けられている。

ヨーロッパからカフカス地方にかけて生息する15亜種
・ssp. adami Ruttner 1975:クレタ島
・ssp. artemisia Engel 1999:ロシアのステップ
・ssp. carnica Pollmann 1879:アルプス南東部、バルカン半島北部、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア
・ssp. caucasia Pollman 1889:カフカス地方
・ssp. cecropia Kiesenwetter 1860:ギリシャ中央部・南部
・ssp. cypria Pollmann 1879:キプロス
・ssp. iberiensis Engel 1999:スペイン、ポルトガル
・ssp. ligustica Spinola 1806:イタリア
・ssp. macedonica Ruttner 1988:ギリシャ北部、北マケドニア共和国、ブルガリア
・ssp. mellifera L. 1758:ピレネー山脈の北のヨーロッパ、アルプス山脈とカルパティア山脈。北はスウェーデン南部、東はロシア中部まで
・ssp. remipes Gerstacker 1862:アルメニア、アゼルバイジャン
・ssp. ruttneri Sheppard, Arias, Grech et Meixner 1997:マルタ
・ssp. siciliana Dalla Torre 1896:シチリア、イタリア
・ssp. sossimai Engel 1999:ウクライナ
・ssp. taurica Alpatov 1935:クリミア半島

アフリカに生息する少なくとも11亜種
・ssp. adansonii Latreille 1804:ニジェール北部から、西はセネガル、南はザンビアまでの西アフリカ
・ssp. capensis Eschscholtz 1822:南アフリカのケープ地方
・ssp. intermissa Buttel-Reepen 1906:西はモロッコ、東はチュニジアまでのアフリカ北岸
・ssp. jemenitica Ruttner 1976:アラビア半島の乾燥地帯、ソマリア、エチオピア、スーダン、チャド、中央アフリカ共和国、ニジェール、ナイジェリア、マリ、ブルキナファソ、モーリタニア、セネガル
・ssp. lamarckii Cockerell 1906:ナイル渓谷(エジプトとスーダン)
・ssp. litorea Smith 1961:東アフリカの低地(ソマリア、ケニア、タンザニア、モザンビーク)
・ssp. monticola Smith, 1961:東アフリカの山地
・ssp. sahariensis Baldensperger 1932:アトラス山脈の南に沿った北西アフリカ一帯(アルジェリア、モロッコ)
・ssp. scutellata Lepeletier 1836:南アフリカからソマリアに至るアフリカ大陸東部
・ssp. simensis Meixner et al. 2011:エチオピア
・ssp. unicolor Latreille 1804:マダガスカル

中東と中央アジアに生息する少なくとも5亜種
・ssp. anatoliaca Maa 1953:アナトリア半島(トルコとイラク)
・ssp. meda Skorikov 1829:イラン、イラク北部、トルコ南西部
・ssp. pomonella Sheppard et Meixner 2003:天山山脈と中央アジア
・ssp. sinisxinyuan Chen et al. 2016:ウイグル(中央アジア)
・ssp. syriaca Skorikov 1829:イスラエル、ヨルダン、レバノン、シリア
(Fontaza et al. , 2018)

日本では、イタリアン種などのイタリア(ssp. ligustica)系のものがふつうに見られる。ヨーロッパ系イタリアン種は美しいイエローの体色をした優良種で、集蜜力があるうえ分蜂しにくく、おとなしい。

また最近では黒色系のもの(ドイツの ssp. carnica など)も導入されている。ヨーロッパ系カーニオラン種は体格がよく黒っぽい体色をしており、集蜜力があり寒さに強いが、刺されるとイタリアン種より痛い。

参考文献

人間との関係

「蜂蜜の歴史は人類の歴史」という諺があるように、ミツバチはカイコとともにもっとも人間生活に深いつながりをもってきた昆虫である。

丸木、素焼の壺、わらでつくったスケップと呼ばれる巣籠などを利用して、古代から養蜂が行われてきた。

古代エジプトでは少なくとも第五王朝までに養蜂技術が体系化され、ミツバチは王位のシンボルとなり、王の墓には数々の宝物とともにハチの巣や蜂蜜が埋葬された。

今日に残る遺跡の壁画やパピルスには、ミツバチの象形文字がしばしば見つかる。

現在でも経済効果という意味において、ミツバチの受粉(ポリネーション)の恩恵は、はかり知れないものがある。

例えば、多くのイチゴ、リンゴ農家は、養蜂家に依頼して巣箱を畑に設置し、受粉させている。

特にイチゴのハウス栽培では、その実りのほとんどにミツバチが関わっていて、果肉の豊かな、商品価値の高い農産物の生産に寄与している。

また、牧畜に関しても、ハチは大きな役割を果たしている。

牛や羊などが食べる牧草(クローバーやムラサキウマゴヤシ)は、ミツバチによる受粉で種を作り、増えていくためである。

さらには、蜂毒をいろいろな体の不調に利用する、蜂針療法も行われている。

蜂毒は、自律神経を整えて自然治癒力を促す働きもあるといわれ、古くは古代エジプトから代替療法として使われてきた。

施術はミツバチから抜き取った針の先を表皮にほんのわずか入れて行う。

ただし、蜂毒アレルギーのある人にこの療法を試すことはできないので注意が必要。

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形態

成虫の形質

橙色味のある黄色。腹の先端はほぼ黒色で、黒い縞模様は胸に近くなるほど狭くなるが、変異が多い。

後翅の翅脈のM₃₊₄がないか、あっても痕跡程度であることからよく似たニホンミツバチと見分けられる。

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幼体の形質

ミツバチの幼虫には眼も触角もない。

半透明の体の中に白く血管のように見えるのは気管系で、酸素は直接各組織、細胞に届けられる。

ミルクや蜜に浸かる側の気門は使えないので、気管系には左右をつなぐバイパスが発達している。

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生態

成虫の食性

花蜜がハチミツに「加工」され、幼虫を含むすべてのメンバーのエネルギー源となるほか、花粉はタンパク質、ミネラルなどエネルギー以外のすべての栄養源となる。

ハチミツは花蜜(ネクター)が濃縮されただけのものではなく、唾液中の酵素群により、ショ糖が転化されてグルコースとフルクトースになり、グルコン酸をはじめとする多種の有機酸が生成したものである。

花粉はだんごに丸められ、巣に持ち込まれると、採集者自身によって花粉巣房に入れられる。

その後、待っていた貯蔵係がすぐに頭でこれを固めるので、「蜂パン」とよばれる巣房内にためられた花粉は数十層からなっている。

花粉房はハチミツの場合のように蓋がされることはないが、保存が長期にわたる場合には、表層部は特に念入りに押し固められ、最上部に蜜を多めに施して封じられる。

このほかに、女王は若い働き蜂からローヤルゼリーをもらっている。

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幼虫の食性

働き蜂、雄蜂になる幼虫は、育児蜂が吐き出して与えるミルクの上に浮かんだ形で、それだけを食べて育つ。

ミルクは若い働き蜂の頭の中、脳のまわりを取り巻くように存在する下咽頭腺で作られ、大顎腺から出される脂肪酸などと混ぜ合わされてヨーグルト状となる。

女王蜂になる幼虫はローヤルゼリーを与えられて育つ。

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成虫の天敵

キイロスズメバチやオオスズメバチは日本のセイヨウミツバチにとって天敵である。

特にオオスズメバチはキイロスズメバチと違って集団で特定のミツバチの巣を襲い、働き蜂を噛み殺し、内部の幼虫と蛹を根こそぎ奪い去る略奪者である。

セイヨウミツバチの場合には、3万匹以上の働き蜂のいる巣でも、20~30匹のオオスズメバチにおそわれると3時間もあれば皆殺しにされてしまう。

セイヨウミツバチはニホンミツバチと異なり、キイロスズメバチにもオオスズメバチにも対抗する術をもたない。

ノゼマ原虫はノゼマ病を引き起こす寄生虫で、下痢のような症状を引き起こす。

最終的にセイヨウミツバチは歩けなくなり、自分から次々と巣門の外に這い出してきて死んでいく。

このほか、スムシ、クマ、カエル、クモ、ツバメなども成虫や巣を襲う天敵である。

参考文献

幼虫の天敵

ミツバチヘギイタダニは羽化前のミツバチに寄生する。

蛹のときに体液を吸われてしまうと、翅が縮れるなどハチが奇形
で生まれてくる。

参考文献

発音(鳴き声)

新女王蜂がほかの女王を探して巣板の上を歩き回りながら、ときどき体全体を低く下げ、翅を強く震わせてピーピーピーと高音を発する。

この発音は、2匹の女王が共存できないミツバチの社会では、決闘相手へ自分の存在を誇示するための合図で、交尾前の新女王のみが行う。

セイヨウミツバチでは、働き蜂のパイピング(ピーという単音)も報告されている。

参考文献

ライフサイクル

夏の間約1か月の寿命だった働きバチが、秋に生まれたものは成虫のまま約半年を生きて冬を越す。

4~6月の繁殖期になると、王台と呼ばれる特別室ができ、数匹の新女王の候補が育てられ、巣分かれ(分蜂)が起こる。

巣分かれはふつう新女王が羽化する前に起こり、半数程度の働きバチが母巣を出ていき、旧女王がそれにともなう。

ミツバチの新女王のあいだでは殺し合いが起こり、ふつう真っ先に羽化したものが後続の王台を壊し、交尾飛行をへて母巣をつぐ。条件に恵まれれば、さらに何度かの巣分かれがくりかえされることもある。

数回の交尾で十分量の精子を得た女王バチはさかんに産卵を始める。その数は多いときには日に2000卵に及び、総重量は自分の体重(約 200 mg)に匹敵する。

卵は34~35℃に温度制御された巣房内で3日でふ化し、その後4回の脱皮をへて蛹になるが、幼虫と蛹の期間はカーストによって異なる。働きバチが18日で、オスは21日、女王は13日といちばん短い。

参考文献

孵化・脱皮・羽化

巣房内で翅を伸ばした蜂は小一日待ってから自分で蓋を食い破り、出房する。

参考文献

生殖行動

ミツバチの繁殖期に当たる4月下旬から6月中旬の晴れた日に、セイヨウミツバチの巣箱では12時から14時30分ごろ多数のオスが出入りするのが見られる。

ミツバチのオスは、午後の一定の時刻になると「オスの集合場所」と呼ばれる空中の特定の空間に集まってくる。

集合場所は地上 10~40 m、直径 50~200 mとその範囲は限定され、景色の中の特徴的な目印や地形を頼りに何百匹も集まっている。

女王バチが集合場所に飛来すると、オスの一団は女王バチのあとを猛烈な勢いで追いかけ、それはちょうど彗星が尾を引いているような形に見える。

女王バチに追いついたオスが女王バチの腹部を6本のあしでとらえて背中に馬乗りになると、瞬時に女王バチの交尾器にオスの生殖器が反転して押し込まれる。

数秒後にオスの体は硬直状態となり、女王バチの腹部からぶら下がるように生殖器が長く伸びてちぎれ、落下して死んでしまう。

そのとき、乳白色をしたオスの生殖器の一部が女王バチの腹部先端に付着したままの状態になる。これは「交尾標識」と呼ばれている。

交尾標識は次に交尾したオスが落下する際にそのオスの生殖器の一部に引っかかって取れ、あとから交尾したオスの標識のみが女王バチの腹端に残される。

女王バチは最後に交尾したオスの標識をつけて巣に戻るが、それは働きバチによって取り去られる。

女王バチは1回の交尾飛行でただ1匹のオスと交尾するのではなく、10匹前後のオスと交尾をする。

玉川大学構内で行われた観察によると、セイヨウミツバチの雄蜂の飛行時間帯は11:30~15:00であり、13:15~16:30に飛行するニホンミツバチとは時間的にすみ分ける結果となっている。

また、ニホンミツバチの交尾場所は、セイヨウミツバチのように広い空き地のようなところではなく、目立つ木の梢の上空であり、場所的なすみ分けも示唆されている。

参考文献

産卵

ミツバチの女王は産卵に際し、自ら測定した巣房のサイズ情報により、雌(働き蜂)用と判断すれば受精嚢中に精子をかけて産み、雄用と見れば精子をかけず無精卵として産下する。

セイヨウミツバチでは雄用の巣房の大きさは雌用のものと比べて20~22%ほど大きい。

また、ミツバチの女王が何らかの事故で急死した場合、女王蜂と幼虫からの抑制が解け、働き蜂の卵巣が発達し始めることが知られているが、セイヨウミツバチでは働き蜂産卵は起きにくいという。

参考文献

特徴的な行動

ミツバチの収穫ダンスによる情報伝達は、まさに言語といってよい域に達している。

(1)花までの距離をコード化して定量的に伝えること
(2)方向を太陽コンパスとして、しかもそれを重力場に対する形に変換して表現していること
(3)蜜源の質や量までもダンスの持続時間で表現していること

の3点において他に例を見ない。

ダンスにもいろいろあるが、最も重要なのはよい蜜(花粉)源を見つけた場合に、仲間をそこへ招集するときのダンスである。

情報の発信者であるダンサーは8の字を描きながら、その中央線を通るところで翅の細かい上下動により 250 ㎐前後の音を出し、同時に尻も振る。

この音の長さが蜜源までの距離を示し、そのときの重力場に対する体軸の角度が方向を示している。

受信者のほうは、触角をかざしてその共振から情報を得ていることがわかっている。

参考文献

その他生態

働き蜂は齢差による分業を行う。

巣房の掃除:羽化後3~5日頃は清掃担当。ゴミを口でくわえ巣房の外に出す。

育児:3~10日頃は幼虫に花粉パンなどを、女王にローヤルゼリーを分泌し、供給する。

空調管理:育児と同時期。巣内環境を一定に保つため旋風行動などで温度を調節。セイヨウミツバチは頭を巣門に向け、ニホンミツバチは頭を外に向けて羽ばたく旋風行動が知られている。

巣作り:10~20日頃。ロウを分泌し、おなじみ六角形の巣を作っていく。

蜜の貯蔵:巣作りと同時期。外役のハチから蜜を受け取り濃縮・貯蔵を行う。

花粉の貯蔵:蜜の貯蔵と同時期。外役担当から受け取った花粉を突き固めて貯蔵する。

門番:羽化後半月から外役に回るまで。外敵などから巣や蜜を守る。

外役:およそ20日以降は、蜜や花粉集めのハードな仕事を死ぬまで担当する。

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関連情報

持ち方・触り方

ミツバチはそうそう人を刺さないため、ハチが耳元で羽音を立てて威嚇行動をしているときは、騒いだり、手で払ったりせず、落ち着いて静かにその場を去るようにする。

もし刺された場合、指でつまんで抜くと針に「かえし」があるので、余計に肌の奥へ毒を注入してしまう。そのため、指でピンとはじくようにし、針を患部から落とすとよい。

参考文献

味や食感

はちみつやローヤルゼリーとして利用する。

また、一口にはちみつといっても、ハチが通った花の種類によって、色合いや味、栄養成分が異なる。

クリやソバなどミネラルの含有率の高い蜜は、色が濃く香りも独特で、ボダイジュの蜜はハーブのような香りが立つ。

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研究されているテーマ

ミツバチの働き蜂の刺針行動の特徴は、刺すと先端付近についている逆鈎のために針が敵の皮膚からぬけなくなり、刺針装置全体が体から取れて蜂は死んでしまうことである。

刺さる部分は三つのパーツからなり、そのうち二つのペアになった部分は哺乳類の皮膚に刺さると、針の表面が圧力センサーにより刺さったことを感受し、交互に激しくスライド運動をし、逆鈎の機能と相まってどんどん潜り込んでいく。同時にペアになった弁の運動により毒液が患部に送り込まれる。

不思議なことにこれら一連の運動は蜂の体から取れた刺針装置でも続くが、それはこの運動のプログラムを容した末端神経球が装置といっしょに取れるからである。驚くべきことに、このプログラムは神経球が上位の神経系から切り離されることにより起動するのである。

さらに患部に残った刺針装置からは警報フェロモンが放出され、ほかの蜂を興奮させ、敵に誘導させる機能を持つ。

ニホンミツバチの毒液の成分はまだ詳しく調べられていないが、セイヨウミツバチでは生体アミン、ペプチド、酵素などからなるカクテルのようなもので、個々の物質は特殊な毒物というよりは、元来ヒトやほかの動物で重要な生理機能が知られる生理活性物質である。

また、きわめて興味深いことに、女王蜂の毒はライバルの女王を殺すことが目的であり、成分的に働き蜂のものとは異なっている。

参考文献

外来種としての影響

セイヨウミツバチが導入(1877年=明治10年)されてからいまだに本州で野生化できないのは、オオスズメバチの存在と、ミツバチヘギイタダニの西洋蜂への寄生拡大のためと考えられる。

しかし、大量に飼養されたセイヨウミツバチにより、畑地や、移動養蜂の群が持ち込まれた山間地で、ニホンミツバチやその他多くのハナバチ類が、花資源をめぐる競争に負け、大きく後退したであろうことは想像に難くない。

現に、小笠原諸島にはオオスズメバチがいないためセイヨウミツバチの野生群がいるが、在来のハナバチ類との間で放花植物をめぐる競争が起こり、競争に負けた在来のハナバチ頬の絶滅が現在危倶されているのである。

同様に、西表島でも同様な現象によるハナバチ類やそれらと送粉共生系が成立している植物類へのダメージが予測されている。同島にはミツバチに対して有効な天敵類が存在しない以上、このままの状況ではセイヨウミツバチの減少は期待することができない。

参考文献

種・分類一覧