エゾハルゼミ(Yezoterpnosia nigricosta)の解説トップに戻る
エゾハルゼミ(Yezoterpnosia nigricosta)の分類 セミ科(Cicadidae)
エゾハルゼミ(Yezoterpnosia nigricosta)の概要 Yezoterpnosia

エゾハルゼミ(Yezoterpnosia nigricosta)

【 学名 】
Yezoterpnosia nigricosta (Motschulsky, 1866)

基本情報

大きさ・重さ

成虫全長:雄 40〜43 mm, 雌 37〜41 mm
成虫体長:雄 30〜37 mm, 雌 23〜26 mm
前翅開長:72〜86 mm

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.

最終更新日:2020-12-29

活動時期

5月中旬〜7月末

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.

最終更新日:2020-12-29

分布

北海道・礼文島・利尻島・焼尻島・奥尻島・本州・佐渡・四国・九州。国外ではサハリン・南千島・中国に分布する。日本における南限は鹿児島県の紫尾山と霧島山である。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.

最終更新日:2020-12-29

分類学的位置付け

昆虫綱 カメムシ目 セミ上科 セミ科 セミ亜科 ヒグラシ族 ハルゼミ属 エゾハルゼミ
ハルゼミとエゾハルゼミが Terpnosia 属に含まれるかどうか、また同一系統かどうかには疑問があり、系統学的な研究が望まれていた。Lee (2012) は Terpnosia 属を再定義し、これら2種を Yezoterpnosia 属に所属変更することを提案した。GBIF はこれを採用しているため、ZUKAN もこれに従う。しかし、エゾハルゼミとハルゼミは別系統と考えられ、さらに腹部の形状等に関してハルゼミとヒメハルゼミ属との中間的な種も認められることもあって、一括してこのような変更はできないとも考えられている。林・税所 (2015) は、属再定義の根拠や近縁分類群との比較検討が不十分であるとし、系統分類学的に未解決の重要な問題があることから、これら日本産2種を従来通り Terpnosia 属に所属するものとして扱っている。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ハルゼミ属, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 109.
  • 税所康正 2019 日本産セミの分類, 税所康正(著) セミ ハンドブック. 文一総合出版. p. 18.

最終更新日:2020-12-29

形態

成虫の形質

中〜小型。ハルゼミよりやや大型で、体幅は狭くほっそりとしている。胸背には緑色や褐色の紋があり、中胸背中央部は黒化することがある。前翅は細長く透明で、各横脈上および各縦脈上 (先端付近) に明瞭な暗色紋を持つ。腹部背面は橙褐色、腹部腹面は橙色〜橙褐色で光沢がある。オス腹弁は黒色で微毛を密生する。メスの腹部は非常に短く、産卵管はわずかに9節を超える程度である。
色彩・斑紋の変異はほとんどないが、中胸背黒色部の発達度合いに多少変異が見られ、オス個体ではしばしば中央部が広く黒色となる。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.
  • 税所康正 2019 エゾハルゼミ, 税所康正(著) セミ ハンドブック. 文一総合出版. p. 56.

最終更新日:2020-12-29

生態

成虫の生息環境

寒冷地の落葉広葉樹林に生息し、北海道、東北地方では平地〜低山地、本州中部以西では標高 700〜1500 mの山地 (ブナ帯) に見られる。ブナ、ミズナラ、コナラ、カエデ類、ハンノキ類ほか、様々な樹種に生息する。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.
  • 税所康正 2019 エゾハルゼミ, 税所康正(著) セミ ハンドブック. 文一総合出版. p. 56.

最終更新日:2020-12-29

成虫の食性

植物の樹液 (導管液) を吸う。

参考文献

  • 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 20.

最終更新日:2020-12-29

幼虫の食性

成虫同様、植物の樹液 (導管液) を吸う。

参考文献

  • 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 20.

最終更新日:2020-12-29

成虫の天敵

鳥類の他、カマキリやヤブキリ、スズメバチ (特にモンスズメバチ) 、アリなどの昆虫類やオニグモ、コガネグモなどのクモ類、多足類のオオムカデ類やゲジ類などに捕食される。ニホンウサギコウモリやニホントカゲに捕食された記録もある。

参考文献

  • 林田直哉 2015 Ⅱ 天敵, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. pp. 24-25.

最終更新日:2020-12-29

発音(鳴き声)

"ミョーキン、ミョーキン、ミョーキン、ミョーケケケケケケ!" という非常にユニークな声で鳴く。1回の鳴き声が通常およそ10秒ほどであるが、序奏を断続的に数多く繰り返すことがあり、その場合非常に長くなる。交尾誘導音 (誘い鳴き) は "オセオセー、オセオセー" と聞きなしされる。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.
  • 税所康正 2019 エゾハルゼミ, 税所康正(著) セミ ハンドブック. 文一総合出版. p. 57.

最終更新日:2020-12-29

活動時間帯

朝から夕方まで鳴く。午後4時を過ぎると活動が鈍り、夕方5時〜5時半ごろにはほぼ鳴き止む。

参考文献

  • 税所康正 2019 エゾハルゼミ, 税所康正(著) セミ ハンドブック. 文一総合出版. p. 57.

最終更新日:2020-12-29

孵化・脱皮・羽化

羽化は多くは夕刻に行われるが、日中の羽化もしばしば観察される。夕刻〜夜間に低温になると、羽化所要時間が極めて長くなる。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.

最終更新日:2020-12-29

生殖行動

雄は雌が近くに飛来すると誘い鳴きをしながら近づいて交尾に入る。交尾形式はV字型で、幹の上でおこなわれる。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.
  • 税所康正 2019 エゾハルゼミ, 税所康正(著) セミ ハンドブック. 文一総合出版. p. 56.

最終更新日:2020-12-29

産卵

木の中ほどの陽のあまり当たらない細い枯れ枝中に産卵する。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.

最終更新日:2020-12-29

特徴的な行動

同じところで数回〜十数回鳴き、比較的鳴き移りは少ない。その間枝を歩き回る。合唱性があり、多数の個体がいる地域では1頭が鳴き出すと連鎖反応的に鳴き出してその状態が長く続く。

参考文献

  • 税所康正 2019 エゾハルゼミ, 税所康正(著) セミ ハンドブック. 文一総合出版. p. 57.

最終更新日:2020-12-29

その他生態

地上に現れた羽化前の幼虫には多少正の走光性が見られる。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 エゾハルゼミ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 113.

最終更新日:2020-12-29

種・分類一覧