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ヒメマルカツオブシムシ(Anthrenus verbasci)の分類 カツオブシムシ科(Dermestidae)
ヒメマルカツオブシムシ(Anthrenus verbasci)の概要 Anthrenus

ヒメマルカツオブシムシ(Anthrenus verbasci)

【 学名 】
Anthrenus verbasci (Linnaeus, 1767)

基本情報

大きさ・重さ

・成虫体長 : 2.5 ㎜内外
・蛹体長  : 3~4 ㎜
・幼虫体長 : 4.5 ㎜
・卵の大きさ: 0.6 ㎜

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最終更新日:2020-08-09 ひろりこん

活動時期

成虫出現(飛来)時期(日本国内):4月中旬~6月下旬

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分布

北海道、本州、四国、九州、対馬、南西諸島;世界各地

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人間との関係

カツオブシムシ科は乾いた動物質を食べ、古くから人間社会で衣類、食品、医薬品(漢方薬)などを食害してきた。今日では美術工芸品、剥製標本、昆虫標本などの被害も大きい。
ヒメマルカツオブシムシの幼虫は繊維に含まれるケラチンを消化できる酵素を持ち、羊毛や生糸などの繊維類、ブラシ、筆などの日用品に特に被害をもたらす。

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形態

成虫の形質

体型は短楕円形。体色は黒の地色の上に白・黄・褐色の鱗片状の毛がさまざまな割合でモザイク状に生えているので、黒色型(出現率は44%)と褐色型(34%)およびその中間色型(22%)に大別され、同種とは思えないほど多様である。頭部は円形、黄色の鱗片を装い、前頭上方に単眼1個を具えている。複眼の内側は一様に弧状で湾入しない。触角は11節で、先端の3節が球桿をなす。触角溝は前胸側縁の半分の長さである。成虫での雌雄の差は外観からは見られず、性別は交尾器で判断する。

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蛹の形質

純紡錘形、体長 3~4 ㎜、淡黄色。腹部末端に2つの突起があるのが雌で、ないのが雄である。

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幼体の形質

細長いだるま型、11節、単眼6対、孵化直後は乳白色で体長約 0.8 ㎜。成熟すると灰褐色、体長約 4.5 ㎜。全体は短毛に覆われ、尾端(第5~7節背面)からは左右刷毛状(槍状)の毛の束が出ており、防衛に役立つ。

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卵の形質

楕円形、乳白色

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生態

成虫の食性

花粉や花の蜜。
白・淡黄・淡青・淡桃色などの花(ノースポール、チューリップ、ハルジオン、ヒメジオン、シャスターデージー、マーガレット、コデマリ、ミヤコワスレなど)に飛来する。赤色、黒色の花(チューリップなど)、ドクダミには飛来しない。

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幼虫の食性

衣類・絨毯(特に羊毛・絹製品)、毛皮・羽毛・ブラシ・毛筆など、鰹節・乾魚、生糸・蚕繭、小動物標本(特に昆虫、剥製)など。
幼虫の食性は植物性(β-シストステロール、エルゴステロール)・動物性(コレステロール)いずれのステロールも利用できるので乾燥動物質、乾燥植物質いずれでも成育できる。
屋外では野鳥の巣、蜂の巣などで成育しているといわれている。

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幼虫の天敵

キアシアリガタバチ(寄生天敵)

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ライフサイクル

通常は1年に1世代で、幼虫で越冬する。幼虫期に5~8回の脱皮を行うが、環境によっては10回以上となる。
3~4月に蛹化、約2週間後に羽化する。羽化後、約10日間ぐらいで交尾と産卵を終わる。産卵後は正の走光性をもち、訪花するようになる。

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孵化・脱皮・羽化

羽化直後の成虫は淡黄色で弱々しく、活動できるまで1~2週間程度そのままの状態で蛹殻内にとどまり、卵巣の発達は羽化数時間後から見られ、蛹殻から脱皮するころには成熟卵が産卵小管に見られる。

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生殖行動

交尾は蛹殻から脱皮後数時間以内に、産卵は交尾後2日以内にはじまり、1~2週間に数回繰り返して行われる。未交尾雌はほとんど産卵しないので、産卵行動は交尾の刺激により起こること、また1回のみの交尾では産卵能力を完全に発揮できないことが確認されている。最初の産卵を1~2日間程度費やして行うが、次の産卵すなわち成熟卵が見られるまで1~3日程度必要である。最初の交尾は1回目と2回目の産卵を刺激し、3回目の産卵は2回目産卵終了後の交尾によっておこる。すなわち、産卵中以外の時期はかなり交尾するが、産卵を刺激する有効な交尾は2~3回程度である。

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産卵

産卵数は30~60卵、平均して40卵といわれる。
野外へ飛び出した雌成虫のうち約10%の個体が、平均10卵を持つことが知られている。(林, 1986, 247)

表面がゲバ状でふっくらしたものを好んで産卵し、ガラスのようなスベスベしたところにはあまり産卵しない性質を持っている。(中元, 2009, 7)

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特徴的な行動

幼虫は大あごで繊維をかみ切って食べるのではなく、大あごの先端で削り取って食べる。したがって大あごは内面がスプーン状にくぼんでいる。(林, 1986, 247)

幼虫の尾端から出ている左右刷毛状(槍状)の毛の束は威嚇に使われ、触れると抜けやすくアリなどに刺さると死亡させることができる。(中元, 2009, 6)

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その他生態

羽化後、交尾・産卵するまでは光から逃れようとする性質、すなわち負の走光性をもつ。(林, 1986, 246-247)

羽化後2週間程度経過すると走光性が正になり、明るい方向すなわち野外へ飛び出し、訪花する習性を持っている。この走光性の転換と産卵の産むとの間に関係は認められず、雌雄とも羽化後一定の日数をへて正になる。野外へ飛来した雌成虫のうち約10%の成虫が産卵能力を有している。(中元, 2009, 7)

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種・分類一覧